【12月8日 AFP】ボクシング界の伝説オスカー・デラホーヤ(Oscar De La Hoya、米国)をラスベガス(Las Vegas)で叩きのめした英雄マニー・パッキャオ(Manny Pacquiao、フィリピン)に、大統領官邸から荒廃したスラム街にまでおよぶ、何百万ものフィリピン国民が喝さいを送った。

 「パックマン」の愛称で知られるパッキャオは、圧倒的な試合内容でデラホーヤを下し、自身がパウンド・フォー・パウンド(体重が同じものと仮定して最強を決めること)において世界最強であるという名声を強固なものとした。

 フィリピンのエドゥアルド・エルミタ(Eduardo Ermita)官房長官は、国内のラジオで「景気後退に直面しているが、国民のやる気は急上昇した」と語り、また、グロリア・アロヨ(Gloria Arroyo)大統領が、パッキャオを祝福するため試合後すぐに電話をかけたことも明らかにした。

 Lorelei Fajardo大統領府副報道官は「大統領と国民は、マニー・パッキャオを心から祝福したいと思っている。パッキャオの勝利はフィリピン国民の精神を示したものだ」と語っている。

 29歳のパッキャオは、フィリピンの国民的英雄である。野菜農家に生まれ、小学校を卒業していないパッキャオだが、5人に2人が一日を2ドル以下で生活するフィリピン国民の心をつかんでいる。

 パッキャオが6階級を制覇したデラホーヤに過去最悪の敗戦を与えた一戦を数千万人がテレビ観戦した。有料放送による生中継を観戦した人はわずかで、多くの人が録画放送での観戦だった。

 試合により国内は実質的な停止状態となり、5日は17人が射殺されたマニラ(Manila)の警察署長は、試合前と試合中に「犯罪は起こらなかった」と語っている。

 建設現場の作業員たちは作業を中断し、市民は試合を放送するパブなどに殺到した。またマニラで有名なスラム街トンド(Tondo)では、地域の政治家の好意により、2500人が生中継で試合を観戦することができた。(c)AFP