【7月15日 AFP】陸上、男子短距離のタイソン・ゲイ(Tyson Gay、米国)は、記憶に残る栄光とけがによる挫折を交互に経験してきた。しかし、ドーピング検査で禁止薬物の陽性反応が報じられたことで、選手としてのキャリアが不名誉な形で終わる可能性に直面している。

 6月に100メートルで今季世界最高となる9秒75を記録した30歳のゲイは、米メディアに対し、来週行われるダイヤモンドリーグ2013(IAAF Diamond League 2013)第10戦のモナコ大会 (Herculis)と、8月に行われる第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow) の欠場を発表した。

 ゲイは2009年、ジャマイカのヨハン・ブレイク(Yohan Blake)と並ぶ9秒69の自己ベストを記録しており、これはウサイン・ボルト(Usain Bolt)に次ぐ世界歴代2位タイの記録となっている。

■栄光味わう中、負傷による挫折も

 2007年には第11回世界陸上大阪大会(11th IAAF World Championships in Athletics Osaka)で100メートル、200メートル、4×100メートルリレーで金メダルを獲得して3冠を達成。2012年のロンドン五輪では4×100メートルリレーで銀メダルを獲得した。

 しかし、波瀾万丈な選手生活を送ってきたゲイは、五輪では夢に届かず、2008年の北京五輪ではハムストリングの故障に泣かされ、ロンドン五輪では、1年近くを要した右腰の手術からの回復もままならないまま、大会に臨まなければならなかった。

 2007年の大阪大会で100メートルと200メートルを制したゲイは、北京五輪では優勝候補に挙げられていたが、国内の五輪代表選考レースでハムストリングを故障し、本大会では準決勝敗退に終わった。

 その後、2009年に上海(Shanghai)で9秒69のタイムを出して世界歴代2位の記録に並ぶと、第12回世界陸上ベルリン大会(12th IAAF World Championships in Athletics Berlin)では、9秒58の世界新記録を出したボルトに次ぎ、9秒71で2位に入った。

 2010年には、その後五輪連覇を達成するボルトに2年間で初めてとなる土をつけ、同シーズンのダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2010)の100メートルで総合優勝。しかし2011年、長年悩まされていた問題を解決するために腰の手術に踏み切ると、回復期間には、世界レベルの走りはもう2度とできないのではという懐疑の声も聞かれた。

■絶好調の今季はボルトの記録をしのぐ

 そして迎えた今季、ゲイは素晴らしい好調ぶりを披露していた。6月の全米陸上選手権(USA Outdoor Track & Field Championships)では100メートルと200メートルの両種目をまばゆい走りで制し、モスクワでの世界陸上でのボルトとの対決を楽しみにする様子を見せていた。

 200メートルで19秒74を記録し、アイオワ(Iowa)州で行われた全米陸上選手権を無敗で終えたゲイは「ウサイン・ボルトが過去最高の選手であることはどう見ても明らかだが、今からきっちりと覚悟しておいた方がいい」とコメントしていた。

 その2日前、ゲイは100メートルで今季世界最高となる9秒75の記録を出していた。

 ゲイはボルトらジャマイカ勢との対戦を心待ちにしており、8月10日から18日にかけて行われるモスクワ大会へ向け、次のようにコメントしていた。

 「楽しみだよ。厳しいレースになるだろう。肉体的にも、精神的にもね」

(c)AFP