コメディアンに奪われたカンボジア人選手の五輪の夢
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【5月6日 AFP】カンボジアはロンドン五輪の男子マラソン代表に日本のコメディアンを選出した――しかし、同国最高の長距離ランナーは快く思っていない。
カンボジア人選手のヘム・ブンティン(Hem Bunting)選手は、「猫ひろし」の芸名でテレビに出演している日本出身の瀧崎邦明(Kuniaki Takizaki)選手よりも約7分も速いタイムを記録しているが、8月に行われるロンドン五輪には出場できない。
ブンティン選手が練習環境について不満を口にしたことで、同選手とカンボジア陸上連盟(Khmer Amateur Athletics Federation、KAAF)は対立し、ブンティン選手は同国代表チームを追われることになった。そしてカンボジア陸連は、同国が持つ五輪特別出場枠(ワイルドカード)を瀧崎選手に与えた。
しかし、この動きは論争の的となって両国のインターネット掲示板は騒然とし、評論家は2011年に瀧崎選手が異例の速さでカンボジア国籍を取得したことに不満をもらし、カンボジアが自国の才能を育てなければならないと主張した。
■ブンティン選手「猫に出場枠を与えたと聞いた時は失望した」
カンボジアの首都プノンペン(Phnom Penh)にある競技場で練習を行っていたブンティン選手は、AFPの取材に応じ、「カンボジア五輪委員会が猫に特別出場枠を与えたと聞いた時は失望したよ。私は不正があったと考えている。たとえ私を五輪に行かせないのであっても、資格を持ったカンボジア人に出場枠を与えるべきだ」と話した。
4月に行われたパリ・マラソン2012(Paris' Marathon 2012)で五輪参加標準記録に届かず、自力での五輪出場権獲得を目指したブンティン選手の最後の希望は打ち砕かれた。
ブンティン選手はカンボジア記録と自己ベストを更新する2時間23分29秒を記録したものの、ロンドン五輪参加標準記録の2時間18分を突破することはできなかった。
貧困問題に苦しむカンボジアには、発展途上国のスポーツ普及を促進することを目的に設けられた奨励特別出場枠が与えられている。