【チェンナイ/インド 9日 AFP】第15回・アジア競技大会(The 15th Asian Games)、陸上・女子800メートルで2位に入賞したインドのサンティ・ソウンダラジャン(Santhi Soundarajan)は、南インドの実家でレンガ窯業で生計を立てる貧しい両親と4人の兄弟と共に銀メダルの栄光を噛み締めているはずだった。しかし代わりに、競技者としてのキャリアは事実上終わりを告げ、思いやりに欠け無神経な関係者に囲まれて公共の場で屈辱の日々を送る羽目に陥った。

 ソウンダラジャンは、競技後に行われた性別検査で不合格となり、アジア・五輪評議会(Olympic Council of Asi、OCA)から銀メダル剥奪の処分が下された。

 インド五輪協会(The Indian Olympic Association、IOA)は、実際には男性であるのに女性として競技に出場したソウンダラジャンはスポーツ界を欺いたと話した。

 ソウンダラジャン本人や両親、コーチの反論にもかかわらずIOAの調査は継続中である。

 「何が起こってるか分からない。」とソウンダラジャンは語る。「なぜ非難を受けているのか?再び競技に戻ることができるのか?」

 『性別検査』が単純なテストかどうかの答えは「いいえ」だ。「性器を見ただけでその人物が男性か女性かを特定することはできない」と婦人科医のSharmila Lal氏は語る。「両性具有として生を受ける者もいれば、性染色体が示す性別とは違った生体を持つ者もいる」

 国際オリンピック委員会(International Olympic Committee、IOC)は、性別決定に関する不明瞭さと不確実性を考慮して1999年に性別検査を中止したが、OCAは継続中である。

 性別検査は、関係者が疑わしいと感じた時や出場選手から抗議を受けた時など、大会主催者が事態を深刻に受け取った場合には実施されている。ソウンダラジャンの件に関しては、薬物管理担当者が不平をもらしたとの報告があるが、別のインド選手が容疑者として浮かんだものの、ソウンダラジャンに対する他の出場選手からの抗議はなかった。

 ソウンダラジャンは、2005年に健康診断で不合格となりインド鉄道(Indian Railways)就職に失敗したが、同大会まで過去に一度も性別検査を受けたことはなかった。しかし同健康診断で婦人科やホルモン検査が行われたかどうかは定かではない。

 性別検査で不合格となったアスリートは、外科手術とホルモン療法を受けてから2年後に専門委員会による再調査を求めることが可能で、再調査に合格すれば競技復帰の資格を得ることができる。

 ソウンダラジャンの唯一の救いは、タミル・ナードゥ州政府が議論にも関わらず彼女を支持し、大会での活躍を称えて賞金150万ルピー(約400万円)を受賞したことだ。

 しかし汚名は消え去るのか?

 写真は、銀メダルを手にポーズをとるサンティ・ソウンダラジャン(2006年12月9日撮影)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA