【8月13日 AFP】工場から伝説のスタジアムへ――。14日に英ウェンブリー・スタジアム(Wembley Stadium)で行われるサッカー国際親善試合のスコットランド代表戦で、リッキー・ランバート(Rickie Lambert)がイングランド代表のユニホームに袖を通せば、その風変わりな出世が達成される。

 イングランド・プレミアリーグのサウサンプトン(Southampton FC)に所属する31歳のランバートは、スコットランド戦の代表メンバーにサプライズ招集された。取るに足らないキャリアの駆け出しを考れば、リーグ内のエリートに交じるランバートの存在は、ことさら思いがけないものだ。

 2000年、ブラックプール(Blackpool FC)での2年の見習い期間で成功を収めることができず、18歳のランバートはチームから放出された。

 契約もなく一文無し同然となったランバートは、故郷カークビー(Kirkby)近くのビートルートの加工工場で働き、フィットネスを維持するため練習を行っていたマクルズフィールド・タウンFC(Macclesfield Town FC)があるマクルズフィールド(Macclesfield)への交通費を稼いだ。

 最終的にマクルズフィールド・タウンはランバートの特別な才能を見抜き、契約をオファー。ランバートは生活のためにビートルートの瓶のふたを閉める必要はなくなった。

 ランバートはマクルズフィールド・タウンで得点を挙げられる選手となると、その後はストックポート・カウンティ(Stockport County FC)、ロッチデール(Rochdale AFC)、ブリストル・ローバーズ(Bristol Rovers)と渡り歩いた。とはいえ、まばゆく光り、大金が舞うプレミアリーグでプレーする運命にはまだほど遠いものがあった。

 それでもランバートはイングランド・フットボールリーグ1(3部)に所属するローバーズで、2008-09シーズンに19ゴール、さらに翌シーズンには29ゴールを挙げてサウサンプトンの目を引いた。

 ランバートは、サウサンプトンでの初シーズンで36得点を挙げ、翌シーズンには21得点を記録してチームはチャンピオンシップ・リーグ(2部)に昇格。さらに11-12シーズンには31得点を挙げ、サウサンプトンはプレミアリーグ昇格を果たした。

 降格争いを戦ったチームの中、ランバートは38試合に出場し、15得点を挙げた。

 突如、代表選考の余地のある選手となったランバートは、12日にはウェイン・ルーニー(Wayne Rooney)、スティーブン・ジェラード(Steven Gerrard)、ジャック・ウィルシャー(Jack Wilshere)らと練習を行った。

 堅実なランバートは、工場時代は遠い記憶だと言う。

「良くない時期であっても、僕は絶対に諦めはしなかった。ブラックプールに放出されたときも終わったとは思わなかった。とはいえ、イングランド代表ははるかかなただったけどね」

「どこのクラブにも行けず、契約なしでマクルズフィールドで練習をしていた。お金がなかったから、工場で働いて稼がざるを得なかった。ビートルートの加工工場だった。ビートルートは好きですらないけどね。瓶のふたを閉めるとか、そういう感じだった。それでお金を手にして、友人と練習に行っていたんだ」

「ブラックプールから放出されたとき、契約を結んでサッカー界に復帰すると確信していた。戻ってこれたのは絶対諦めなかったからさ」

 昨シーズン、イングランド人選手としてプレミアリーグ最多タイの得点を挙げたランバートだが、破城槌のようなプレースタイルは国際試合のレベルには原始的すぎるとの批判もある。

「レギュラーになることが目標さ。またここにこれるように頑張って、しっかりプレーし、印象を残してもう一度チャンスを手にする。対戦する相手となら誰であろうと戦えることを証明していきたいね」

(c)AFP/Steven GRIFFITHS