【2月3日 AFP】イングランド・プレミアリーグのチェルシー(Chelsea)に所属し、同国代表チームで主将を務めるジョン・テリー(John Terry)の人種差別発言疑惑をめぐる裁判が7月に行われることになり、同選手から主将の座を剥奪すべきかどうか物議をかもしている。

 人種差別反対運動団体をはじめ、評論家や選手からは、6月に開催されるサッカー欧州選手権2012(UEFA Euro 2012)でイングランド代表チームに混乱を招きかねないとして、テリーを主将から外すべきだとの意見が上がっている。

 テリーは10月に行われたリーグ戦で、クイーンズ・パーク・レンジャーズ(Queens Park RangersQPR)のアントン・ファーディナンド(Anton Ferdinand)に人種差別発言を行ったとして起訴されているが、本人は疑惑を否定しており、自身の無実を証明することを誓っている。

 イングランド代表のファビオ・カペッロ(Fabio Capello)監督は、イングランドサッカー協会(Football Association、FA)と相談した結果、「有罪が確定しなければ、主将を交代しない」との見解を示しているが、公判が欧州選手権終了後に延期されたことで主将問題が再浮上し、多方面から最終決断をFAが下すべきとの声が寄せられている。

■テリーの主将続投で懸念される代表チームへの影響

 英国のダミアン・コリンズ(Damian Collins)下院議員は、米マイクロブログのツイッター(Twitter)で「ジョン・テリーはこの一件が解決するまで主将の座を自ら降りるか、剥奪されるべきだ」と意見を述べた。

 欧州サッカーの反人種差別団体(Football Against Racism in EuropeFARE)のエグゼクティブ・ディレクターを務めるピアラ・パワー(Piara Powar)氏は、コリンズ議員の意見を支持し、「有罪が認められなければ交代はないと言うが、欧州選手権で主将を務めることも良いとは思えない」とツイートした。

 レディング(Reading FC)所属のストライカーで、英BBCラジオ(BBC Radio)でレギュラー番組を持つジェイソン・ロバーツ(Jason Roberts)は、「正しい判断がされなければ、欧州選手権でのドレッシングルームは不穏な空気に包まれてしまう」と懸念している。

 またロバーツは、2000年にジョナサン・ウッドゲート(Jonathan Woodgate)とリー・デイヴィッド・ボウヤー(Lee David Bowyer)が暴行事件で起訴され、FAから代表召集禁止処分を受けたことを引き合いに出し、「ウッドゲートとボウヤーは代表にも呼ばれず、奉仕活動に従事したのでは?」とツイートした。

■迫られるFAの決断

 1月28日のFAカップ2011-12(FA Cup 2011-12)4回戦では、テリーが提訴されてから初めてとなるチェルシーとQPRの対戦が実現したが、FAがキックオフ前の握手を行わないことを決定したため、両者が直接握手を交わす場面は訪れなかった。

 5日にチェルシーは、アントンの兄リオ・ファーディナンド(Rio Ferdinand)が所属するマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)との試合を控えており、試合前の握手なしはこの試合でも適用される可能性がある。

 英タイムズ・スポーツ(The Times Sports)紙のマット・ディッキンソン(Matt Dickinson)氏は、「FAはテリーの処遇について難しい決断を迫られている。どんな決断を下そうと、差別発言で起訴された選手を欧州選手権に出場させることが正しいのか、という疑問はつきまとうことになる」とコメントした。

 また、英インデペンデント(The Independent)紙のサム・ウォリス(Sam Wallace)氏も、「主将の座を剥奪すれば、それもまた一部の人にとっては批判の対象になるだろう。だが今回のような申し立てを受けた選手を罰するのは正当な判断だ。厳しい決断を迫られるのが責任を背負う協会の役目だ。今回の問題は監督が1人で決断できるような簡単なものではない。英国サッカー界にとっても極めて重要な時だ」と意見を述べている。(c)AFP/Rob Woollard