【8月28日 AFP】スペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)は、スウェーデンの代表のズラタン・イブラヒモビッチ(Zlatan Ibrahimovic)を獲得したが、同地区に本拠地を構えるRCDエスパニョール(RCD Espanyol)は、セルティック(Celtic)から移籍金なしで日本代表の中村俊輔(Shunsuke Nakamura)を獲得し、自らのミッションを果たしている。

 イタリア、スコットランドに続いて3か国目の挑戦となる中村の入団会見には、およそ7000人のファンと300人の報道陣が集まるなど、レアル・マドリード(Real Madrid)で輝かしいキャリアを築き、1964年にエスパニョールに入団したアルフレッド・ディ・ステファノ(Alfredo Di Stefano)氏以来の大歓迎を受けている。

 中村は地元紙Sportに対し「セルティックとの契約が切れた時、最初の考えは日本に戻ることだった。多くのオファーがあったが、すべて断った。スペインでプレーすることは夢であり、見過ごすことはできなかった」と語っている。

 多くのアジア人選手がスペインでプレーしてきたわけではないが、2002年に日本を離れてレッジーナ(Reggina Calcio)に入団した中村は、その後セルティックに4シーズン在籍し、3度のリーグ優勝を経験するなど、海外での生活に十分慣れている。

 中村は「異文化に溶け込むことには慣れており、ここに馴染むためにすべてのことをするつもり。日本と文化は違うが、スコットランドやイタリアとはそれほど変わらない。ファンはどの国も違う。スコットランドとイタリアでプレーしてきたが、エスパニョールのようなファンには一度も会ったことはなかった」と語っている。

 2006-07シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)グループリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)戦でフリーキックから決勝点を挙げるなど、プレースキックのスペシャリストである中村に対し、エスパニョールのファンはその左足で何ができるのかを示して欲しいと期待している。

 中村は「フリーキックを蹴るには多くの競争がある。現時点では左足のキッカーがいないので、その場面が来たら自分が蹴りたい。だけど最優先はチームメイトに溶け込むことであり、懸命にトレーニングし、自分がトップチームのレギュラーであるとはっきりさせること」と語っている。

 2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)が目前に迫る中、日本代表として87キャップを数える中村は定期的にプレーする必要があるが、W杯のことを考えるのは時期尚早だと強調している。

 中村は「現時点でW杯のことは考えていない。エスパニョールのために最高のプレーをしたいだけ。もしここで良いプレーができなければ、監督が自分を使ってくれないことは分かっている」と語っている。

 7番の新ユニフォームを着て中村は、新本拠地コルネジャ・エルプラット(Cornella-El Prat)のこけら落としとなったリバプール(Liverpool FC)との親善試合(3-0)で、新天地でのデビューを飾っている。

 エスパニョールのマウリシオ・ポチェッティーノ(Mauricio Pochettino)監督は、中村の姿勢を称賛し、新シーズンへ向けて大きな期待を寄せている。

 ポチェッティーノ監督は「彼はわれわれの期待に応えてくれるだろう。偉大なフットボーラーであり、キャリアを通じてそのことを示している」と語っている。

 日本でチームの知名度が大きく上がるなど、エスパニョールにとって中村獲得は魅力的な取引だったが、中村にとってメディアの注目は今に始まったことではない。

 中村は「日本のジャーナリストと話すことには慣れているし、それぞれ自分の仕事があるので、彼らともめたことはない。自分は31歳の普通の人間だと思っている。家庭的な人間で、平穏な人生を過ごしたい。毎日玄関の前に多くのカメラが来ることになるので、街の郊外に住むよ」と語っている。(c)AFP/Phil Seery

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