【4月11日 AFP】欧州サッカー連盟(Union of European Football AssociationsUEFA)は10日、サッカーから差別と迫害を根絶する活動の一環として、ピッチ内外での人種差別に対する新たな処分の概要を明らかにし、厳格化の方針を示した。

 UEFAのジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)事務局長はこの日、人種差別を行ったことが確定した選手に対しては最低10試合の出場停止処分を科し、またファンによる人種差別行為が明らかになったクラブについては、スタジアムへの観客の入場を制限しての試合開催を命じると発表した。

 インファンティーノ事務局長はイングランド北西部のマンチェスター(Manchester)で行われたサッカービジネス会議「サッカレックス(Soccerex)」の会場で、「抑止効果のある罰則を定める必要がある。我々は人種差別を行った選手や関係者に対して、最低で10試合の出場停止やベンチ入り禁止を科す」とコメントした。

「サポーターによる人種差別行為が確定したクラブについては、1度目の場合は現場となったスタジアムの一画を閉鎖することを求める。2度目の場合は無観客とし、最低5万ユーロ(約650万円)の罰金を科す」

  欧州サッカーの反人種差別団体(Football Against Racism in EuropeFARE)でエグゼクティブディレクターを務めるピアラ・パワー(Piara Powar)氏は、UEFAの発表を歓迎した。

「処分は非常に明確で、疑問の入る余地のないものです。今後の課題は、この処分規定に教育をどう盛り込んでいくかでしょう。クラブやファンが、何に対して処分を科されたか分からないという事態は一番避けなくてはなりません。そのため我々は現在、UEFAと追加の罰則について話し合っています。問題のあったクラブに対して実演を義務化し、どのような教育活動を行っているかを対外的に示してもらうことを考えているのです」

 サッカー界では現在、各国リーグから国際試合まで、様々な場面で悪質な人種差別が立て続けに報告されていることから、差別とこれを廃絶する最も効果的な方策が緊要の課題となっている。

 UEFAと国際サッカー連盟(FIFA)の両団体も、人種差別を行った選手やクラブ、国に対して厳しい罰を与えることができておらず、方針も不透明であるとして批判の対象となってきた。

 イングランド・プレミアリーグでは、チェルシー(Chelsea)のジョン・テリー(John Terry)とリバプール(Liverpool FC)のルイス・ スアレス(Luis Suarez)に対し、人種差別発言でそれぞれ4試合と8試合の出場停止が科されたが、インファンティーノ事務局長は、この程度の処分ではもはや不十分だと考えている。

「我々が求めるのは10試合の出場停止だ。これまでは5試合だったがそれを倍にする。今後は国際レベルだけでなく、UEFAに加盟するすべての各国協会に対しても、同じ基準を採用することを求めるつもりだ」

「人種差別との戦いは甘いものではない。我々は口だけではなく、正しい行動を取るということを明確にする必要がある」

(c)AFP