【2月8日 AFP】欧州委員会(European Commission)は7日、サッカーの移籍市場でビッグクラブが投じた資金が、より小さいクラブまで回らないことが要因となり、リーグを底上げする機会を逃しているとの見解を示した。

 欧州委員会が実施した調査では、イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)やスペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)といった強豪クラブの優位性を懸念し、地方クラブとの間に生じる格差の広がりは、サッカー界全体に悪影響を及ぼすだろうと警鐘を鳴らしている。

 調査によると、サッカークラブが選手の獲得に費やす資金は年間約30億ユーロ(約3749億5000万円)に上るとされているが、そうした資金が中小クラブやアマチュアサッカー界に還元されることはほとんどないとしている。

 移籍金の総額は1995年から2011年にかけて3倍に高騰しており、選手に支払う年俸などを含めれば、クラブの支出は7倍にも跳ね上がっている。しかし、巨額の移籍金のほとんどは、限られた強豪クラブの間で動いているだけだ。

 欧州委員会は「持つ者と持たざる者の間に不均衡が生じており、小規模クラブに流れる移籍金は全体の2%以下。若手育成資金を捻出するために必要とされる金銭の再分配がなされておらず、ビッグクラブだけが潤い続け、小さいクラブの発展を妨げている」としている。

 欧州連合(EU)のスポーツ担当委員を務めるアンドローラ・ワシリウ(Androulla Vassiliou)氏は、移籍に関する規則を定める権限は各スポーツ機関にあるとしながらも、「すべてのクラブ、若い選手の育成につながるルールが必要」と指摘した。

 調査を行った欧州委員会は、契約に対する規制を強化するとともに、小規模クラブに還元するための「フェアプレー課税」といった徴収システムの導入を求め、各クラブに所属選手の人数制限を設けることを提案。さらに代理人などの第三者が選手の所有権を一部保有することで移籍金高騰の原因となっている仕組みについても言及した。

 今回行われた調査結果は、4月にEUの専門家グループが集まって行われる「スポーツにおける良いガバナンス」と題した会議で提出される。

 同会議には国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)、欧州プロサッカーリーグ協会(EPFL)、欧州クラブ協会(ECA)、国際プロサッカー選手会(FIFPro)も参加する。(c)AFP