【6月21日 AFP】18日夜に行われた2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)イングランド対アルジェリア戦の直後、イングランド代表のロッカールームに男性ファンが入り込み、0対0で終わった試合内容について苦言を呈する騒動があった。

 男性は国際サッカー連盟(FIFA)のスタッフに付き添われて建物の外に連れ出されたが、その後、南アフリカ警察は男性の宿泊するホテルを突きとめ、20日になってこの男性を逮捕。男性は500ランド(約6000円)の保釈金を払って釈放され、21日に裁判所に出廷する。

 男性は、トイレを探していて迷い込んだだけと主張している。

■直前に王子ら訪問、警備の甘さに関係者激怒

 騒動が起きたのは、試合終了の約45分後。パブロス・ジョゼフ(Pavlos Joseph)さん(32)は英紙サンデー・ミラー(Sunday Mirror)に対し、試合の行われたケープタウン(Cape Town)のグリーンポイントスタジアム(Green Point Stadium)内でトイレを探していたところ、偶然イングランド代表チームのロッカールームにたどり着いてしまったと説明した。

 ロッカールームには、元イングランド代表主将で現在はファビオ・カペッロ(Fabio Cappello)監督のスタッフとして代表チームに同行しているデビッド・ベッカム(David Beckham)さんがいた。そこでジョゼフさんはベッカムさんに、代表チームの試合ぶりは「恥ずべきもの」で「惨めで不十分だ」と伝えたという。

 ところが、この騒動が起きる数分前に、英国のウィリアム王子(Prince William)とヘンリー王子(Prince Henry)がロッカールームを訪問していたことから、スタジアムの警備の甘さに対してイングランド・チーム側がFIFAに公式に抗議。FIFAも、警備員がファンを追い払っただけで拘束しなかったことについて不快感を表明した。

 FIFAのNicolas Maingot広報担当は19日の会見で、「FIFAの大会において参加チームのロッカールームにファンが侵入できるなどということを、FIFAは決して容認できない」と述べた。

■「大げさすぎ」とベッカム、王子も笑い飛ばす

 一方ベッカムさんは19日、ファンの突然の「訪問」が大騒動に発展したことについて「大げさに騒ぎすぎ」と指摘した。

「あのファンはごく気軽な様子で、文字通りただロッカールームに入ってきただけだ。そして私に話しかけて立ち去った。もみ合いもなかったし、これっぽっちも攻撃的ではなかった。チームのパフォーマンスについても何も言われなかったよ。入ってきて『ハロー』と言っただけだ」

 ベッカムさんは、男性が現れたのは王子らの退室後「5~10分後」の出来事だったと述べ、「王子たちの退室後で良かったよ」とした上で、騒動は「明らかに大げさになりすぎている」と語った。

 ウィリアム王子もまた、「僕らがドアを開けっ放しにして去ってしまったから、そのせいで(ファンの侵入騒ぎが)起きたんじゃないかな。僕らの責任だね」とジョークを述べ、騒動について笑い飛ばした。

■背景に警備員らの不満か

 南アでW杯開催が決定した6年前から、治安問題は最大の懸念だった。特に、南アの犯罪率が非常に高いことは問題視されてきた。しかし実際にW杯が開幕してから大きな問題となっているのは、スタジアムの警備だ。

 ケープタウンなど3か所のスタジアムでは、給料の額をめぐって警備員が一斉ボイコットをし、警官らがスタジアム警備を代行するという騒ぎが起きた。また、スタジアムのゲートでファンを誘導するスタッフが、FIFA契約の警備会社に給金支払いを求め、警官隊と衝突する騒ぎも2か所で起きている。(c)AFP/Chris Otton