【10月2日 AFP】サッカー欧州チャンピオンズリーグ2007-08(UEFA Champions League 2007-08)・グループリーグH・第2節。アウェーでのステアウア・ブカレスト(Steaua Bucharest)戦を2日に控えるアーセナル(Arsenal)のアーセン・ベンゲル(Arsene Wenger)監督は、プレミアリーグの頂点に立つために欧州チャンピオンズリーグを犠牲にする可能性があることを認めた。

 ベンゲル監督は一度もビッグイヤーを獲得したことは無いが、抽選に恵まれ運を味方につけることが重要な要素となるトーナメント方式を採用するチャンピオンズリーグではなく、38試合に及ぶリーグを制覇することこそが真のチーム力を反映すると主張している。

 ベンゲル監督は早熟なチームがステアウア・ブカレストを降し、公式戦の連勝を9に伸ばすためにあらゆる手段を講じるだろうが、あくまでもプレミアリーグ制覇への情熱が07-08シーズンのベンゲル監督の原動力となっている。

 アーセナルは10月29日に行われたリーグ第8節ではウェストハム(West Ham)を1-0で降して07-08シーズンに入って公式戦無敗(10勝1分け)を続けており、チームにはマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)から覇権を奪回する力があることを確信しているベンゲル監督は、07-08シーズンのリーグ制覇は1996年に指揮官に就任して以来3度(1998年、2002年、2004年)達成している優勝以上の充実感をもたらすものと考えている。

 ベンゲル監督は「クラブ史上1度も成し遂げていない欧州チャンピオンズリーグの制覇を実現したいが、個人的にはその重要性は高いとは言えない。もう少し若ければビッグイヤーを獲得して『私が一番だ』と言って回りたいだろうが、私は十分な経験を積んでおり今さら『私がどんなに優れているか見てみろ』なんて言いたいとは思わない。正直に言ってチャンピオンズリーグは過大評価されている。チャンピオンズリーグはカップ戦に過ぎず、本当の意味でチームや監督の真価が問われるのはリーグ戦だ。往々にしてトップレベルのチームが最も良い状態で大会に臨むことが難しいのでチャンピオンズリーグで優勝することは難しいが、プレミアリーグで勝つことはさらに難しい。プレミアリーグはクラブレベルにおいて世界で最も難しいコンペティションだ。38試合から40試合で争われる欧州クラブ選手権のようなものが開催されるのであれば、そこで優勝したチームが真の欧州王者と言えるだろう」と語っている。

 ベンゲル監督が最もビッグイヤーに近づいたのは、FCバルセロナ(FC Barcelona)との2005-06シーズン大会の決勝で残り10分間で2失点を喫して逆転されるまでの時間だった。この敗戦がアーセナルの成功を支えてきたベンゲル監督の申し子がスポットライトを浴びた最後の瞬間となった。

 ティエリ・アンリ(Thierry Henry)をはじめ、ソル・キャンベル(Sol Campbell)、デニス・ベルカンプ(Dennis Bergkamp)、アシュリー・コール(Ashley Cole)、ロベール・ピレス(Robert Pires)らが次々とチームを去ってベンゲル監督が着手した改革は、その実を結び始めた段階に過ぎない。経験豊富な主力選手がチームを去ったことで、ベンゲル監督は才能溢れる若手選手の血をチームに注入することが可能となった。

 必然的に主力となったセスク・ファブレガス(Cesc Fabregas)をはじめロビン・ファン・ペルシー(Robin Van Persie)、エマヌエル・アデバヨール(Emmanuel Adebayor)、ガエル・クリシー(Gael Clichy)らの若手選手には生みの苦しみを伴ったが、優勝したマンチェスター・ユナイテッドに大きく水をあけられて4位に終わった06-07シーズンは通過儀礼に過ぎなかった。06-07シーズンは僅か2週間の間でカーリング杯(Carling Cup)、FAカップ(FA Cup)、欧州チャンピオンズリーグの3つのコンペティションで敗退を喫する苦しい時期もあったが、その悔しさがチームに更なる成長への意欲を促す結果となった。

 アーセナルのプレーには最も成功したチームには一目で見て取れる勝利への欲求がある。ベンゲル監督は選手たちにいかなる困難も打ち破る力があるという信念を植え付け、これまでのところ選手は全てのテストをクリアしている。

 もしベンゲル監督が選手たちに与しやすい相手だと勘違いさせなければ、グループで最も力の劣るステアウア・ブカレスト戦の結果は自然とついてくるだろう。現段階ではベンゲル監督に目標を変えるよう説得することはできないかもしれないが、ベンゲル監督がリーグと欧州チャンピオンズリーグの2つことを考え始める日はそう遠くないかもしれない。(c)AFP/Steve Griffiths