【ニューヨーク/米国 28日 AFP】米国の女優で国連親善大使のミア・ファロー(Mia Farrow)さんが、28日付の米ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)紙で、映画監督のスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)氏や大企業らに対し、「ダルフール(Darfur)紛争における中国のスーダン政府支援を黙認し、北京五輪の準備を手伝っている」と非難した。

 スピルバーグ氏は2008年に開催される北京五輪の特別顧問。ファローさんは同氏のほか、五輪スポンサーであるコカ・コーラ(Coca-Cola)やマクドナルド(McDonald’s)に対し、「中国の影響力を活用し、スーダン政府に紛争地帯ダルフールの民間人保護を説得するよう、中国政府に共に働きかけよう」と訴えた。

 ダルフールを過去2回、訪れたことのあるファローさんが、息子ロナン・ファロー君と共同署名したコラム記事の題は「ジェノサイド五輪」。

■コラムでもスピルバーグ氏を批判

 「あまりにも多くの企業スポンサーが五輪開催中、(ダルフールの)残虐行為から世界の目をそらしたがっていることは劣悪だ」とつづり、「しかし、同様に失望させられることは、スティーヴン・スピルバーグのような芸術家が(彼は今月、五輪開会・閉会式準備支援のため北京を訪問したが)、北京のイメージのクリーンアップに手を貸していることだ」と映画界の巨匠を非難した。

 ファローさんのコラムはスピルバーグ氏への批判をさらに強めた。
「ナチスのホロコーストの生存者の証言を記録するため、1994年に”ショア基金”を創設したスピルバーグ氏は一体、中国がダルフールの大虐殺の財源となっていることを認識しているのだろうか」

 さらにホロコーストを描いたスピルバーグ氏が、アカデミー賞7部門の受賞作「シンドラーのリスト(Schindler’s List)」の監督であることをとらえ、1936年のベルリン五輪の映像を、ナチスのプロパガンダ映画「オリンピア(Olympia)」として製作した監督レニ・リーフェンシュタール(Leni Riefenstahl)の現代版になりかねないと警告、「氏は歴史をさかのぼり、北京五輪のレニ・リーフェンシュタールになりたいのか?」と強く攻撃した。

 「世界中の多くのテレビ局スポンサーも、この不名誉を分かち合いたいのか? そうにちがいない。そうでなければ、もちろん、スポンサーらは一丸となって自分たちの立場を有効に生かし、中国に対してダルフールの虐殺を止めさせるよう、声を高めるべきだ。こうした声が集まれば、中国政府がその影響力を利用してスーダン政府に働きかけ、ダルフールの民間人の保護を要請できる、と考えてもらいたい」

 またファローさんは北京五輪のスローガンについても触れ、「”ひとつの世界、ひとつの夢”の真の精神に、真に国際的な敬意を払えば、北京五輪はまさしく誇りと称賛の祭典となるだろう」と述べた。

 国連(UN)によると、スーダン政府と反政府組織間で2003年にダルフール紛争が開始して以来、少なくとも20万人が死亡し、200万人以上が避難民となっている。

 写真は、2月26日、第79回アカデミー賞授賞式会場に登場したスピルバーグ監督。(c)AFP/HECTOR MATA