【6月6日 AFP】米大リーグ(MLB)がドーピングへの関与が疑われる選手約20人に出場停止処分を検討する中、渦中の選手たちは潔白を主張し、静観する姿勢を示した。

 米スポーツ専門局ESPNは、選手にステロイド剤などの運動能力向上薬を提供したとされるフロリダ(Florida)州マイアミ(Miami)のクリニック「バイオジェネシス(Biogenesis)」を設立したアンソニー・ボッシュ(Anthony Bosch)氏がMLB側の調査協力に合意し、同クリニックが禁止薬物を提供した選手名を報告すると伝えた。

 MLBは、ニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)のアレックス・ロドリゲス(Alex Rodriguez)やミルウォーキー・ブルワーズ(Milwaukee Brewers)のライアン・ブラウン(Ryan Braun)らに対して100試合の出場停止処分を科す可能性があると報じられている。

 ブラウンは一切の不正行為を否定しており、トロント・ブルージェイズ(Toronto Blue Jays)のメルキー・カブレラ(Melky Cabrera)やテキサス・レンジャーズ(Texas Rangers)のネルソン・クルーズ(Nelson Cruz)は、MLB側の対応を静観する姿勢を見せた。MLBは、米国の国民的スポーツである野球界から、ヒト成長ホルモン(Human Growth HormoneHGH)といった禁止薬物の排除に努めている。

 これほど多数の選手が運動能力向上薬使用で出場停止を科せられれば、米国のスポーツ界史上最大規模のドーピングスキャンダルとなる。

 MLBがバイオジェネシスの調査に入ったことは、1月にマイアミ・ニュー・タイムズ(Miami New Times)紙が報道したことで公になった。同紙はMLBの選手への薬物の販売記録が記された同クリニックの極秘資料も入手したとしている。

 しかし、MLBが疑惑の選手に正式な処分を科すためには、証拠としてボッシュ氏による立証が必要となっていた。

■処分の可能性を受けて、選手はそれぞれの思いを口に

 ブラウンは2年前にテストステロン(testosterone)の使用が認められたが、異議申し立てを行った結果、尿検査のサンプルが適正に扱われなかったとしてMLBの処分を免れた。4日のオークランド・アスレチックス(Oakland Athletics)戦で勝利を挙げた後、この件に関して質問されたブラウンは以前と変わらない対応に終始した。

「マイアミの一件についてはもうあらゆることについて話した。春のキャンプ中に発表した以上のことを言うつもりはないよ。真実は変わっていない」

 2011年シーズンのナ・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いたブラウンは2月に発表した声明で、過去にドーピング疑惑がかけられた時に、自身の弁護士が訴訟の準備に際してボッシュ氏に相談役としての依頼をしたと関係性を説明している。

 一方、ボストン・レッドソックス(Boston Red Sox)戦に5-17で敗れた試合後の取材に応じたレンジャースのクルーズは、「何も言えないね。今は捜査中の段階だろうし、彼ら(MLB)は彼らの仕事をしている。何もコメントすることはないよ」と述べるにとどまった。

 同じくテストステロン使用で昨年50試合の出場停止処分を受けたカブレラは、ワールドシリーズ制覇を果たしたサンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants)にいながらプレーオフに出場することができなかった。そのカブレラはニューヨーク・デーリー・ニューズ(New York Daily News)紙に対して、処分は十分に受けたとコメントしている。

「MLBがまた俺を出場停止にするとしたら、それは厳しすぎる。すでに罪は償った。でも判断するのはMLBだ。俺はすでに罰は受けたと信じているし、特にプレーオフに出られないというのは何よりもつらいことだった」

 ア・リーグの最優秀選手(MVP)に3度選出されているロドリゲスは、ステロイドで陽性反応が出たことはないが、レンジャースに所属していた2001年~03年に運動能力向上薬を使用した事実を2009年に認めている。

 こうした状況を受けてヤンキースのバーノン・ウェルズ(Vernon Wells)は、「MLBが何らかの判断を下すまではすべてが憶測でしかない。何か決定的なことがない限り、特に何も言えない」とコメントした。(c)AFP