【9月19日 AFP】イランは18日、人権派弁護士ナスリン・ソトゥデ(Nasrin Sotoudeh)氏ら政治犯10人余りを釈放した。8月に就任したハサン・ロウハニ(Hassan Rowhani)大統領の国連(UN)演説を来週に控え、国際的な評価を意識した動きとみられる。

 ソトゥデ氏は、人権活動家や政治犯の弁護を引き受けていたイランでは数少ない人権派弁護士で、人権擁護活動で貢献があった人物や団体に贈られる欧州議会(European Parliament)のサハロフ賞(Sakharov Prize)も受賞している。2010年に逮捕され、翌年「国家安全保障に対する共謀」の罪などで禁錮11年の刑と20年間の司法活動禁止を命じられた。

 ソトゥデ氏が有罪とされた罪の中には、ノーベル平和賞を受賞したイランの人権活動家でイラン政府の宿敵となっているシリン・エバディ(Shirin Ebadi)氏が創設した「人権擁護活動家センター(Centre for Human Rights Defenders)」の会員であることも含まれている。今年1月には、国連や欧州連合(European Union)、主要な国際人権団体などがイラン当局へ呼び掛けた結果、ソトゥデ氏は3日間だけ一時釈放されていた。

■「活動は続ける」とソトゥデ氏

 18日に釈放されて間もなく、ソトゥデ氏は自宅でAFPの電話取材に応じ、3年間の獄中生活にもかかわらず心身ともに健康だと述べ、人権擁護活動の継続を誓った。

 家族の喜ぶ声が聞こえる中、ソトゥデ氏は力強い声で「精神的には非常に良好だが、経験したこと──心理的なプレッシャーや厳重警備の(獄中の)緊張した空気、電話ができないことなどは大変きつかった」と述べた。刑務所内での過酷な処遇と家族への圧力に抗議し、11か月ほど前には獄中でハンガーストライキを行ったが、今は身体的にも健康だという。

「警官に車で自宅まで送られた際、今回の釈放は一時的なものではなく、完全釈放で、もう刑務所に戻る必要はないと言われた」と語ったソトゥデ氏。今後も人権擁護活動を続けるかと問われると「もちろん。働く許可は得ており、活動は続ける」と答えた。

■釈放されたのは09年大統領選デモの参加者

 イランからの報道によると、18日の夜に釈放されたのはソトゥデ氏の他、マフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)前大統領の不正が疑われた2009年の大統領選後、選挙のやり直しを求めた大規模な抗議デモの際に逮捕された改革派10人余り。この中にはモフセン・アミンザデ(Mohsen Aminzadeh)元副外相や、改革派の政治家フェイゾラ・アラブシャヒ(Feyzollah Arabsorkhi)氏、改革派ジャーナリストのマーシャ・アミラバディ(Mahsa Amirabadi)氏らが含まれるとされる。

 2009年の抗議デモでは、当局が参加者を激しく弾圧し、元政府高官やジャーナリスト、人権活動家ら数百人を含む改革派の人々数千人が逮捕された。

 一方、2011年2月から自宅軟禁下に置かれている野党指導者のミルホセイン・ムサビ(Mir Hossein Mousavi)元首相とメフディ・カルビ(Mehdi Karroubi)元国会議長については、何の情報も発表されていない。(c)AFP/Mohammad DAVARI