【8月30日 AFP】シリアでの化学兵器を使用した攻撃に対し、国際社会では最初の怒りの波が鎮まり始めた中、米国主導で計画されている軍事介入に対し、欧州各国では疑念が高まっている。

 各国の政治家も国際社会も、シリアの首都ダマスカス(Damascus)郊外の市民に対して化学兵器が使用されたというニュースに一様に衝撃を受けた。しかし、これに対する懲罰的な攻撃に全ての人たちが同意しているわけではない。

 イラクとアフガニスタンでの残忍な戦争の記憶は、多くの国の指導者や有権者たちを慎重にさせており、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、同盟軍を組織しての攻撃に同意を得ることに苦心している。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)首相が軍事介入に積極的だった英国でも29日、対シリア軍事行動に支持を求める政府提出の動議を下院が賛成272、反対285で否決した。英国の世論は、一部誤った情報に基づいて開始されたイラク戦争の時のように、長引く戦いにはまり込むことを懸念しており、シリアに対する攻撃には消極的だ。英世論調査会社YouGovによると、シリアへの攻撃への支持は28日までに22%にまで落ち込み、一方で反対は同51%に増加している。

■政府も世論も慎重姿勢

 米オバマ政権は、先週シリアで起きた化学兵器による攻撃は同国のアサド政権によるものだと結論付けたが、その他の国は現地で調査中の国連(UN)調査団による報告を待っている。

 ドイツでは、テレビ局ZDFの世論調査で、回答者の58%が軍事介入に反対。欧米諸国はシリアを攻撃すべきだと答えたのは33%だった。

 米英仏3か国の政府はこれまで先頭に立って軍事行動を呼び掛けてきたが、フランスでは世論が二分している。2つの世論調査の結果では、「国連決議があれば」という条件を付けても、賛成する回答は55%、45%にとどまった。

 イタリアは、2011年のリビア攻撃の際には基地も提供したが、今回は国連安全保障理事会(UN Security Council)の決議がない限り、あらゆる軍事介入への参加の可能性はないとしている。

 オーストリアとスペインでは、政治家やメディアが慎重な対応を訴えており、国連調査団が証拠を提示するまでいかなる行動も起こすべきではないと強く主張している。また米国の忠実な同盟国であり、イラクやアフガニスタンにも大規模な軍を派遣してきたポーランドさえ、強硬な軍事介入には反対している。

 一方、米国の主要な同盟国であるカナダは29日、欧米諸国による軍事介入を支持する意向を表明した。ただし、自国は参加しない方針だという。(c)AFP/Michael MATHES