【8月13日 AFP】ノルウェーで話題を集めた、「有権者の関心事を知るため」としてイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)首相がタクシー運転手に変装して客を乗せた動画で、乗客数人が企画の一部についてあらかじめ知らされていた上、謝礼も支払われていたことが12日、明らかになった。同首相が党首を務める労働党も事実を認めている。

 1か月後に控えた総選挙でストルテンベルグ首相率いる中道左派連合の敗北が予想される中、タクシー運転手の制服姿でサングラスをかけた首相が、客を乗せてオスロ(Oslo)市内を運転する姿を捉えた隠しカメラの映像が11日に動画サイトで公開された。動画は瞬く間にソーシャル・ネットワークやメディアを通じて広まり反響を巻き起こした。

 だがこの動画について日刊紙ベルデンスガング(Verdens GangVG)は12日、乗客14人中の5人は労働党からの依頼に応じてタクシーに乗り込んだ客だったと報じた。労働党の広報も、この5人について、党のビデオ撮影に参加してほしいとの事前の要請に応じた一般市民だったことを認めている。

 ただ同広報によると、5人はタクシーに乗ってビデオ映像を撮影するということ以外、なにも知らされておらず、運転手がストルテンベルグ首相だと気付いたときの反応は純粋なものだったと説明した。5人には「謝礼」として500クローネ(約8300円)が支払われたという。なおストルテンベルグ首相はタクシーの運転資格を持っていないため、首相が運転したタクシーの乗客たちは料金を払っていない。

 最近の世論調査によると、来月9日に行われる総選挙で中道左派連合は右派政党に大きく引き離されるとみられており、タクシーを運転する首相の動画が大人気となったところで、形勢を逆転することは難しそうだ。(c)AFP