NSA、拡大の一途をたどる米国の電子情報収集機関
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【7月10日 AFP】エドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者が米当局の監視プログラムを暴露したことで、スーパーコンピューターを使い、暗号解読専門の数学者らが監督する世界で最も強力な電子情報収集オペレーションを実施する極秘組織、米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)に注目が集まっている。
ハリウッド(Hollywood)映画の監督や小説家により、米中央情報局(CIA)は潜入捜査官で有名になった。だがデジタル時代において、ハイテクを駆使するNSAは米国の16情報機関の中で担当する範囲が最も広い組織だと言えるだろう。NSAが集めた情報は意思決定や軍事計画で中心的な役割を果たしている、と専門家は言う。
スノーデン容疑者が暴露した情報によって、米国が在ワシントンD.C.(Washington D.C.)欧州連合(EU)代表部をはじめとする同盟国の通信を傍受していたことも明らかになった。これは、「外国の標的」に関連した会話や電子メールならいかなるものでも収集することができるNSAの能力と符合する。
■「No Such Agency」、極秘機関NSA
真珠湾(Pearl Harbor)攻撃のような奇襲攻撃を防止するために第2次世界大戦後(World War II)に創設されたNSAは、「これまでに作られた情報機関の中で最大にして、最も隠された、そして潜在的には最も侵害的な機関に自らを作り上げていった」と、自著でNSAの活動を明るみに出したジェームズ・バムフォード(James Bamford)氏は述べる。
ハリー・トルーマン(Harry Truman)米大統領は1952年、暗号解読業務が未整理で混乱していたことを受け、NSA創設の秘密指令を出した。NSAはソ連を監視したり、米国と国外で行き交う通信を追跡したりする自由を実質的に持っていた。
秘密主義のNSA職員は、自分の勤務先は国防総省だと話すようにしていた。結果として、NSAは「No Such Agency(そんな機関は存在しない)」「Never Say Anything(決して一言も口外しない)」とのニックネームを獲得した。
CIAは盗聴器を仕掛けるために建物に侵入することがあるかもしれないが、NSAは「現在進行中の」情報を担当し、通信ケーブルや無線電波で交わされるデータを吸い上げる。
1970年代、上院の調査によって、反戦運動などの抗議行動に参加した米国民の監視にNSAが利用されていたことなど、行き過ぎた情報収集活動が続々と発覚したことを受け、米議会はより厳しい法規制と監督体制を導入した。
■重要性増すNSA、組織も拡大の一途
NSAはあらゆる種類の「信号情報」を担当するだけではない。NSA長官は米サイバー軍の司令官を兼任し、NSAはサイバー攻撃から米国のコンピューターネットワークを防衛する上で不可欠な役割を果たしている。
NSAの予算は今もなお公開されていないが、米情報機関の中で最も多額の予算を得ているとされている。ジャーナリストのダナ・プリースト(Dana Priest)氏とウィリアム・アーキン(William Arkin)氏の共著「トップシークレット・アメリカ(Top Secret America)」によると、2001年の9.11米同時多発テロ以降、NSAの予算は倍増したという。
NSAの本部は首都北東のメリーランド(Maryland)州フォートミード(Fort Meade)にある。高速道路には職員専用の出口まである。職員数は非公開だが、NSAの職員数は「3万7000人から10億人の間」だとある高官がジョークを言ったこともあった。
インターネットの出現と、9.11後に国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の情報が必要となったことにより、NSAは日に日にその重要性を増し、スノーデン容疑者のような契約社員を数万人規模で雇用して、暗号学や言語学、電気工学の専門家やその他の技術者が必要な大がかりな作戦を実施している。
その草創期、NSAは「シャムロック(Shamrock)」と呼ばれる、1か月に15万本の電報を傍受することのできるプログラムを使った。これには複数の米国企業が、違法なのではないかという懸念を持ちながらも協力した。
「トップシークレット・アメリカ」によれば、現在、「NSAの情報収集システムが傍受し保管する電子メール、電話の通話、その他の通信」は、1日当たり「17億件」に上る。NSAは「このうちの一部を70個のデータベースに分類している」という。
この膨大なデータの保管のため、NSAはユタ(Utah)州の砂漠に20億ドル(約2000億円)の費用を投じ、NSAの「クラウド」を運用する広大なデータ保管センターを建設中だ。(c)AFP/Dan De Luce
ハリウッド(Hollywood)映画の監督や小説家により、米中央情報局(CIA)は潜入捜査官で有名になった。だがデジタル時代において、ハイテクを駆使するNSAは米国の16情報機関の中で担当する範囲が最も広い組織だと言えるだろう。NSAが集めた情報は意思決定や軍事計画で中心的な役割を果たしている、と専門家は言う。
スノーデン容疑者が暴露した情報によって、米国が在ワシントンD.C.(Washington D.C.)欧州連合(EU)代表部をはじめとする同盟国の通信を傍受していたことも明らかになった。これは、「外国の標的」に関連した会話や電子メールならいかなるものでも収集することができるNSAの能力と符合する。
■「No Such Agency」、極秘機関NSA
真珠湾(Pearl Harbor)攻撃のような奇襲攻撃を防止するために第2次世界大戦後(World War II)に創設されたNSAは、「これまでに作られた情報機関の中で最大にして、最も隠された、そして潜在的には最も侵害的な機関に自らを作り上げていった」と、自著でNSAの活動を明るみに出したジェームズ・バムフォード(James Bamford)氏は述べる。
ハリー・トルーマン(Harry Truman)米大統領は1952年、暗号解読業務が未整理で混乱していたことを受け、NSA創設の秘密指令を出した。NSAはソ連を監視したり、米国と国外で行き交う通信を追跡したりする自由を実質的に持っていた。
秘密主義のNSA職員は、自分の勤務先は国防総省だと話すようにしていた。結果として、NSAは「No Such Agency(そんな機関は存在しない)」「Never Say Anything(決して一言も口外しない)」とのニックネームを獲得した。
CIAは盗聴器を仕掛けるために建物に侵入することがあるかもしれないが、NSAは「現在進行中の」情報を担当し、通信ケーブルや無線電波で交わされるデータを吸い上げる。
1970年代、上院の調査によって、反戦運動などの抗議行動に参加した米国民の監視にNSAが利用されていたことなど、行き過ぎた情報収集活動が続々と発覚したことを受け、米議会はより厳しい法規制と監督体制を導入した。
■重要性増すNSA、組織も拡大の一途
NSAはあらゆる種類の「信号情報」を担当するだけではない。NSA長官は米サイバー軍の司令官を兼任し、NSAはサイバー攻撃から米国のコンピューターネットワークを防衛する上で不可欠な役割を果たしている。
NSAの予算は今もなお公開されていないが、米情報機関の中で最も多額の予算を得ているとされている。ジャーナリストのダナ・プリースト(Dana Priest)氏とウィリアム・アーキン(William Arkin)氏の共著「トップシークレット・アメリカ(Top Secret America)」によると、2001年の9.11米同時多発テロ以降、NSAの予算は倍増したという。
NSAの本部は首都北東のメリーランド(Maryland)州フォートミード(Fort Meade)にある。高速道路には職員専用の出口まである。職員数は非公開だが、NSAの職員数は「3万7000人から10億人の間」だとある高官がジョークを言ったこともあった。
インターネットの出現と、9.11後に国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の情報が必要となったことにより、NSAは日に日にその重要性を増し、スノーデン容疑者のような契約社員を数万人規模で雇用して、暗号学や言語学、電気工学の専門家やその他の技術者が必要な大がかりな作戦を実施している。
その草創期、NSAは「シャムロック(Shamrock)」と呼ばれる、1か月に15万本の電報を傍受することのできるプログラムを使った。これには複数の米国企業が、違法なのではないかという懸念を持ちながらも協力した。
「トップシークレット・アメリカ」によれば、現在、「NSAの情報収集システムが傍受し保管する電子メール、電話の通話、その他の通信」は、1日当たり「17億件」に上る。NSAは「このうちの一部を70個のデータベースに分類している」という。
この膨大なデータの保管のため、NSAはユタ(Utah)州の砂漠に20億ドル(約2000億円)の費用を投じ、NSAの「クラウド」を運用する広大なデータ保管センターを建設中だ。(c)AFP/Dan De Luce