【7月1日 AFP】欧州委員会(European Commission)のビビアン・レディング(Viviane Reding)副委員長(司法・基本権・市民権担当)は6月30日、交渉開始で合意に至ったばかりの欧州連合(EU)と米国との貿易協定が、米国によるEU事務所の盗聴疑惑により頓挫する恐れがあると述べた。

 30日のドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)が機密文書を基に米国家安全保障局(National Security AgencyNSA)による在ワシントンD.C.(Washington D.C.)EU代表部の秘密監視を詳細に報じたことを受けて、EU、フランス、ドイツは怒りの声を上げた。機密文書の一部は米当局の監視プログラムを暴露して訴追され、現在逃亡中のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者から提供されたものだった。

 レディング副委員長は、この盗聴疑惑が事実であると判明した場合、欧州と米国による世界最大の自由貿易圏構築のための交渉にとって、深刻な打撃となる恐れがあると語った。

「われわれのパートナーが欧州側の交渉担当者の事務所を盗聴しているという疑惑がある中で、大西洋をまたぐ大型市場の交渉は出来ない」と、レディング副委員長はルクセンブルクで行われた会合で語った。

 また、欧州委員会は声明で「ワシントンD.C.とブリュッセル(Brussels)の米当局者に即座に連絡を取り、報道について突きつけた」と述べている。

 米政府は同日、EUに対して外交チャンネルを通じて応答すると表明。「特定の情報活動疑惑について公の場でコメントをすることはないが、全ての国々が収集している情報と同種の情報を米国も収集する方針であることはすでに明言している」と、米国の情報機関を統轄する国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)事務所は声明で発表した。

 だが、英紙ガーディアン(Guardian)が7月1日、米国が他にもフランス、イタリア、ギリシャの在ワシントンD.C.大使館も監視の対象にしていたと報じたことにより、EUと米国の間の緊張はさらに高まるとみられている。(c)AFP/Philippe SIUBERSKI