米最高裁、投票権法の一部に違憲判断 市民権の「後退」とオバマ氏
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【6月26日 AFP】米連邦最高裁は25日、黒人など少数派市民の投票権を保障するために作られた「投票権法(Voting Rights Act)」の主要条項を違憲とする判断を下した。バラク・オバマ(Barack Obama )大統領は、この判断を市民権の「後退」であるとして、失望感を表明している。
最高裁は、投票権法の内容のうち、投票制度で差別が行われた歴史がある南部を中心とした州や自治体に対し、選挙方法を変更する際には事前に連邦政府の承認を受けることを義務付けた中核的原則については支持した。しかし全米50州のうち、どの州にこの条項が適用されるかを決定する方法を示した同法第4条については、判事9人中5人が「時代遅れ」なもので議会での改定が必要と判断。これにより、投票権法全体が事実上無効になった。
ジョン・ロバーツ(John Roberts)連邦最高裁長官は、判事らの多数意見として「われわれの判断は、投票における人種差別を国全体で恒久的に禁止する措置に影響を及ぼすものではない」との見解を示しながらも、「投票権法第4条は違憲である。現在の対象(州)は何十年も前のデータと、今はない実態に基づいている。現在の米国はもはや(同法が制定された1965年当時のように)分断されてはいない。しかし投票権法は昔と同じように扱われている」と批判。現在の状況に基づいて新たな第4条を起草するか否かの判断を、議会に委ねた。
米議会は上院で共和党が多数派を占める「ねじれ議会」であることから、いかなる改定も近い将来に実現することは実質、不可能だろうと政治評論家らはみている。
一方、違憲判決に「深く失望した」と述べたオバマ大統領は、「(判決は)特に投票における差別が横行していた歴史がある場所で、投票の公平性を確保するために数十年にわたり続いてきた実践を覆すものだ。今日の決定は後退だが、選挙における差別をなくすわれわれの取り組みの終わりを示すものではない。全ての米国人が確実に、平等に投票できるための立法を議会に求める」と述べた。
2006年に大幅に改定された投票権法では、南部を中心とした9州の州政府と、その他7州に所属する多数の地方自治体に対し、選挙法を改定する際には司法省の承認を得る必要があると定めている。 同法の適用を決定づける要素となるものは、少数派の投票を妨げるとされる識字能力テストの実施や、英語のみによる投票など、多岐にわたる選挙方法が含まれる。連邦最高裁は今月、多数の不法移民を抱える南西部アリゾナ(Arizona)州が住民の投票の際に米市民を証明する書類の提示を強制することはできないとの判断を、最高裁判事9人中7人の多数意見として示している。
投票権法について米国人の意見は割れており、米CNNテレビが最近行った世論調査では、「もはや必要でない」との回答が50%、「今も必要」が48%だった。 2012年の米大統領選の際には、写真付き身分証明書の提示について、貧しい非白人有権者(写真付き身分証明書を持たない場合が多く、オバマ大統領支持派が多いとされる)を投票から遠ざけてしまうとして、問題視する声が人権活動家らから上がっていた。(c)AFP/Chantal Valery