【6月12日 AFP】ロシアの国家会議(下院)は11日、未成年者に対して同性愛を助長する「プロパガンダ」と、宗教信者の感情を害する行為を禁じる2つの法案を可決した。論争の的となっていたこの2法案が、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に対抗する勢力の抑圧に用いられることを懸念する見方もある。

 採決に先立ち、下院の前では同性愛活動家がキスをして抗議活動を行ったが、人数でそれを上回る数百人の法案支持者も同じ場所に集まった。法案支持者の中には宗教的なシンボルを掲げる人もいた。

 2法案のうち、未成年者に対する「同性愛プロパガンダ」を禁止する法案は、賛成436票、反対0票、棄権1票で可決され、下院を通過した。

 メディアやインターネットを使ってそのような「プロパガンダ」を行った個人は10万ルーブル(約30万円)以下の罰金、団体は100万ルーブル(約300万円)以下の罰金と90日以下の業務停止処分を科される可能性がある。この法律は外国人も対象にしており、メディアやインターネットを使って同性愛プロパガンダを流した外国人は10万ルーブル以下の罰金と15日以下の拘留を科された上、国外退去処分を受ける可能性がある。

 一方、賛成308票反対2票で同じく可決されたもう1つの法案は、「社会に対する明らかな冒瀆(ぼうとく)の表明と宗教信者の信仰心を害することを目的とした公の場での活動」を行う者に1年以下の禁固刑と30万ルーブル(約89万円)以下の罰金を科すというもの。これらの行為を礼拝施設で行った者は、3年以下の禁固刑と50万ルーブル(約148万円)以下の罰金が科せられる。

 下院で可決された法案は、今後、上院を通過して最終的にプーチン大統領が署名すれば法律として成立する。

 ロシア国内で同性愛に対する嫌悪感が広がる中、これらの法案が同性愛者の迫害を正当化する根拠とされることを恐れる声も出ている。人権活動家や欧米各国の政府は今回の2法案について、昨年3期目に返り咲いたプーチン大統領の反対勢力を弾圧する前例のない動きだとして批判していた。(c)AFP/Anna SMOLCHENKO