【6月7日 AFP】訪日したフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は7日、安倍晋三(Shinzo Abe)首相と会談し、日仏が防衛装備品の共同開発に取り組むことなどを盛り込んだ共同声明を発表した。

 安倍首相は会談後の共同記者会見で、日仏両国がアジア太平洋地域の安定化推進に向け協力していくことで合意したと表明。「普遍的価値や利益、責任を共有する日仏両国が特別なパートナーシップを深化させていくことを確認した」と述べ、外務・防衛の閣僚級会合を開催することや、防衛装備品を共同開発することなどで合意したことを明らかにした。

 尖閣諸島(Senkaku Islands)の領有をめぐって中国と対立する日本は、中国政府が増強した軍事力をもって周辺国に圧力をかけていると批判しており、先にフランス企業が中国にヘリコプター着艦装置を売却したことについても、尖閣周辺での示威行動に使われる恐れがあると懸念を表明している。東アジア地域の緊張が高まる中、日本政府は味方を増やそうと「魅力攻勢」ともいえる働き掛けを各国に行っているが、大半の国は中国の機嫌を損ねるのを恐れているようだ。

 安倍首相は、日本とフランスは自由や安定といった基本的・普遍的な価値を共有しており、国際社会から期待される指導的役割を発揮できるとの見方を示した。

■来日の焦点は原子力協力

 3日間にわたるオランド大統領の来日の主な焦点は日仏の経済連携にあり、特に原子力産業分野で協定を結ぶとみられている。

 日本国民の間では2011年の福島第一原発事故の影響で原発に対する不安が広がっているが、原子力推進派の安倍首相は、安全性が保証された時点で多くの原発の再稼働を命じる意向を表明している。現在稼働中の原子炉は2基だけだが、原発事故以前の日本は電力の30%前後を原子力で賄っていた。一方のフランスは、米原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute)によると、エネルギー需要の75%前後を原子力に依存している。

 オランド大統領には閣僚6人のほか、原子力大手アレバ(Areba)の最高経営責任者(CEO)など仏財界の要人40人が随行している。

■アベノミクスは「良いニュース」

 オランド大統領は、安倍首相の経済政策「アベノミクス(Abenomics)」を称賛し、日本経済再生のため大規模な金融緩和と財政支出に踏み切ったことについて、緊縮財政を迫られ苦しむ欧州諸国にとって「良いニュースだ」と述べた。

 オランド大統領は報道陣に向かい「安倍政権成立後、日本政府はさまざまな対策を導入した。いずれも日本の問題であって私は判断する立場にないが、経済成長とデフレ脱却を優先し企業の競争力を重視した点は、同じく成長を優先すべき欧州にとって良い知らせだ」と語った。(c)AFP/Kyoko Hasegawa