【5月27日 AFP】アフリカで最も大統領在任期間が長く、最も批判を受けている指導者の1人でもあるジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領(89)の素顔を捉えたドキュメンタリー番組が、6月2日に南アフリカで放送されることになった。放映に先立ってその内容を英国と南アのメディアが報じた。

 番組のプロデューサー、ダリ・タンボ(Dali Tambo)氏(54)は、ムガベ大統領の妻の酪農場で昼食をともにしながら、2時間30分にわたってムガベ大統領にインタビューした。ムガベ氏は妻と子供たちに囲まれたなごやかな雰囲気の中、多岐にわたる話題について話をした。

■「ブレアは信頼できなかった」

 ムガベ大統領は、4月に死去したマーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)元英首相とは意見の不一致もあったが、後に英首相を務めたトニー・ブレア(Tony Blair)氏よりサッチャー氏の方が好きだと語った。 「サッチャーさんを信頼することはできた。だが、その後の労働党やブレアとなると話は別だ。ブレアは全く信頼できなかった。だれがブレアさんの言葉を信頼できる?うちではブライアー(Bliar、嘘つきブレア)と呼んでいるんだ」。旧宗主国の英国についてムガベ氏は「こちらが向こうにとって都合の良いことをやっている時だけ、こちらを称賛してくる」という。

■マンデラ氏は「白人に対していい人すぎる」

 アフリカで最も人気のある解放運動指導者の1人であるムガベ大統領は10年ほど前、白人所有の農地を強制収用するという論争を呼んだ政策で西側諸国と対立した。隣国の南アでは白人の土地所有はいまだに火種となっている。

 ムガベ大統領は、南アのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領は手ぬるかったと指摘した。南ア紙サンデー・インディペンデント(Sunday Independent)によると、ムガベ氏は番組の中で「マンデラは非黒人社会に対して良くし過ぎた。時には(黒人が)犠牲になったことさえあった」「(マンデラ氏は)人が良すぎて、あまりにも聖人みたいだ」と語ったという。

■不倫は「母親に孫を持たせるため」

 ムガベ氏は、病気がちだった1人目の妻、サリー(Sally)夫人と結婚していたうちから現在のグレース(Grace)夫人と交際していたことについて、自分の母親に孫を持たせたかったからだと率直に語った。サリーさんが1992年に死去した後、ムガベ大統領は自分の秘書で40歳以上年下だったグレース夫人と結婚した。ムガベ大統領夫妻には3人の子供がいる。

■早期の選挙実施を主張、引退は否定

 暴力的な衝突が相次いだ2008年の選挙を経て、ムガベ大統領は現在、ライバルのモーガン・ツァンギライ(Morgan Tsvangirai)首相と権力を分け合っている。今年予定されている選挙の日程は未定だが、ムガベ氏はなるべく早い選挙の実施を主張している。

 英紙ガーディアン(Guardian)によると、選挙の話題になるとムガベ氏は熱のこもった口調でアームレストをたたきながら「戦いのための戦いがある」と語り、タンボ氏に「私の人民はまだ私を必要としている」と話して、高齢であってもまだ引退の時期ではないと述べたという。

 好戦的で手厳しいことで知られるムガベ氏を愛情あふれる家族的な男性として描いたこの番組は、選挙前にムガベ氏のイメージを良くしているという批判もある。しかし南アの反アパルトヘイト運動の英雄、故オリバー・タンボ(Oliver Tambo)氏の息子である番組プロデューサーのタンボ氏は、この番組の前シリーズで人種差別主義者だったローデシア(ジンバブエの旧国名)の故イアン・スミス(Ian Smith)氏をインタビューしたこともあると述べて批判を一蹴し、ムガベ大統領は「温かく、カリスマ的で、とてもユーモラスな」人だったと語った。(c)AFP/Johannes MYBURGH