【4月5日 AFP】米国が警告を強め、北朝鮮が威嚇するという応酬が数週間にわたって続いている。米政府の政策立案者たちは北朝鮮に断固とした態度で臨みつつも、今回の危機が武力衝突に発展する事態は阻止したいと考えている。

 北朝鮮の宣言の喚き散らしは有名だが、今回は核攻撃を振りかざしたり、日本海側にミサイルを移動したとみられるなど、日韓米の3か国を激しく揺さぶっている。

■武力衝突を避けたい米国

 3月11日から韓国と合同年次軍事演習を行っている米国は先週、核爆弾搭載能力のあるステルス戦略爆撃機「B2」の模擬弾投下演習を行ったことを発表するという異例の対応に踏み出した。米国が軍事力を誇示する一連の行動の背景には、韓国の朴・新政権

に米韓同盟を改めて保証する意図がある。

 ある米高官は、北朝鮮に影響を与えるためには軍事力を見せつける必要はあるが、同時に米国は危機の高まりを抑えて、誤算が生じる可能性をできるだけ小さくしたいのだと説明する。「少なくとも現時点では、武力衝突の瀬戸際にあると考えるべきではない。武力衝突を避けるため、あらゆる努力をしなければならない」

 米国防総省は3日、米領グアム(Guam)島にミサイル迎撃のための終末高高度防衛(Terminal High Altitude Area DefenseTHAAD)システムの配備を急ぐと発表したが、これは防衛措置だと説明している。

 米国務省のビクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)報道官も、米政府の方針に転換はないと強調する一方、状況が「これ以上、熱くなるのを待つまでもなく」、北朝鮮の態度が変われば米国にも「違う道」を取る余地があると語った。

■打てる手は全て打った米国、後は北朝鮮の対応次第?

 懸念を募らせているのは、北朝鮮3代目の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記について、米国がほとんど知らないということだ

。

 米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations)」のスコット・スナイダー(Scott Snyder)上級研究員は、2月に3度目の核実験を挑発的に行った北朝鮮に対し、米国は明確なメッセージを伝えるために既に十分に手を尽くしたはずだと述べる。しかし、北朝鮮側の行動計画がまだ仕上がっていそうにない状況下では、米国には過熱状況の冷却化に乗り出す動因がなかったと説明する。

「北朝鮮は米国のメッセージを理解していると思う。現時点における問題は、北朝鮮が既に定めた行動方針の上にあることだ」(スナイダー氏)

 4月の米韓合同軍事演習に関して、米シンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)」のボニー・グレイザー(Bonnie Glaser)氏も、米国にはもっと軍事行動を公開する余地があったが、北朝鮮に対して「対話の窓は開かれている」と言い続けること以外のジェスチャーは示せなかったと述べる。「米国としては、北朝鮮の脅しに応じたくはない。北朝鮮が緊張緊和に向けて動かない限り、何も新たに提示すべきではないと思う」

 一方、2月に米国務次官補(東アジア・太平洋担当)を辞任したカート・キャンベル(Kurt Campbell)氏は、オバマ政権は北朝鮮に対し、周到に準備した「二重のメッセージ」を送ったのだと言う。

 オバマ政権は北朝鮮に警告を発すると同時に、北朝鮮による具体的な軍備増強は見受けられないと発表した。これについてキャンベル氏は、次のように述べている。「効果的に対処できる限界を超えて事態がエスカレートする状況にならないよう(オバマ政権は)そうしていると思う。ここ(朝鮮半島)は世界で最も危険な地域の一つで、一触即発の軍事増強地帯だ。したがって非常に慎重な対応が必要だ」(c)AFP/Shaun Tandon