【3月12日 AFP】国連安保理が前週採択した制裁決議で新たな経済的・外交的窮地に立たされた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記は、米韓軍事演習が開始された11日、黄海(Yellow Sea)上にある韓国領の島を「せん滅する」と述べ、威嚇姿勢をさらに強めている。
 
 南北の軍事境界線に近い砲兵部隊を視察した金第1書記は、軍事衝突が発生した場合の第一目標は黄海の南北境界水域にある韓国領・白ニョン島(Baengnyeong Island)だと述べ、部隊に細かく指示を出した。

 金第1書記の視察は、北朝鮮が南北休戦協定の白紙化と、続いて不可侵条約の破棄を宣言する引き金となった韓米合同軍事演習の初日にあたった。また北朝鮮は、米国と韓国に対する核先制攻撃にまで言及している。

 こうした一連の発表はおおかた威嚇に過ぎないと捉えられている。ただ一方では、2010年に同島沖で起きた韓国軍の哨戒艦「天安(Cheonan)の沈没(乗員46人死亡)や、同年の延坪島(Yeonpyeong Island)に対する砲撃(4人死亡)の前例もあり、警告が現実味を帯びていることも事実である。白ニョン島には、韓国軍部隊に加え民間人5000人が住んでいる。
 
 国営朝鮮中央通信(Korean Central News Agency、KCNA)が12日に報じた内容によると、金第1書記は視察した砲撃部隊の指揮官らに「島ごと火の海にせよ」と述べるなど、その指示の詳細さと敵意が際立っていた。

 他方、国連(UN)は11日、北朝鮮による休戦協定の白紙化宣言は無効であると反論。マーティン・ネシルキー(Martin Nesirky)国連報道官は「休戦協定が依然、有効であることを強調したい。休戦協定の条項は、どちらの側にも一方的に同協定の拘束から逃れることを認めていない」と述べた。(c)AFP