謎の「囚人X」、イスラエル刑務所で自殺した豪男性はモサド工作員か
発信地:エルサレム/中東・アフリカ
[
中東・北アフリカ
]
このニュースをシェア
【2月14日 AFP】イスラエルの対外特務機関モサド(Mossad)の工作員だったオーストラリア人男性が、イスラエルの刑務所で独房に監禁された末に自殺していた――。豪メディアが12日に報じたイスラエルの謎の「囚人X(Prisoner X)」のニュースが物議をかもしている。
オーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation, ABC)の報道によると、モサドの工作員だった「X」ことベン・ズィギヤー(Ben Zygier)氏(34)は2010年、イスラエル・テルアビブ(Tel Aviv)近郊の刑務所で死亡。イスラエル当局は同氏について報道管制を敷き、異例の長期間にわたって問題の隠ぺいを図ったとされる。
イスラエル政府は13日になって沈黙を破り、イスラエルとオーストラリアの二重国籍を持つ人物を独房に収容していたと認めた。イスラエル法務省の声明によれば、問題の人物は「外国籍も持つイスラエル人」で「安全保障上の理由から、身元情報を偽造して収容していた」が、この人物の家族には拘束されていることを伝えていたという。2年前に独房内で死亡しているのが見つかり、司法調査の結果、自殺と断定されたという。この人物の詳しい身元や拘束理由は明らかにしていない。
一方、オーストラリアのボブ・カー(Bob Carr)外相は当初、問題の人物の死後に初めて身柄を拘束されていたことを知ったと説明していたが、14日の議会委員会で、豪政府が拘束当時に情報を得ていたことを認めた。カー外相によると、「イスラエルの国家安全保障法に基づく深刻な違法行為に関係した人物の名前」がイスラエル当局から知らされ、豪政府は適切な身柄の取り扱いを保証するよう求めたという。
■ネットに一瞬だけ掲載され消えた「最高機密」、真相は?
「X」の存在は、イスラエルのニュースウェブサイト「Yネット(Ynet)」が2010年6月に掲載した記事で初めて明らかになった。この記事は「X」について、拘束の事実自体が最高機密扱いとされ、身元や拘束理由は刑務所の職員にも知らされていないと伝えたが、掲載直後に削除され、イスラエル国内では報道管制が敷かれた。
豪ABCの12日の報道によると、「X」はモサドに勧誘された豪メルボルン(Melbourne)出身のユダヤ系弁護士のベン・ズィギヤー氏で、2001年にイスラエルに移住した後はベン・アロン(Ben Alon)と名乗り、イスラエル人の妻と2人の子供がいたという。ズィギヤー氏はモサドで働いていたことから、その身柄が拘束されたことはイスラエル情報機関の最高機密の1つだったという。
ABCはズィギヤー氏の拘束理由に関しては不明だが、テルアビブ近郊のアヤロン(Ayalon)刑務所に実質的な孤立状態で収容されていたと説明。自殺防止のため最先端の監視システムが設置されていたにもかかわらず、2010年12月に独房内で首をつって死亡しているのが発見されたと報じている。
イスラエルのヘブライ語日刊紙ハーレツ(Haaretz)は、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相が12日、国内の報道機関各社の幹部を呼んで緊急の会議を行い、「特定の政府機関にとって恥となるような情報を公表しないよう」求めたことを明らかにするとともに、その政府機関がモサドであることを示唆した。しかし、その直後に国会議員3人が審議中にこの問題を取り上げたため、この「かん口令」は実質的に緩和されたことになった。
豪メディアでは、「X」の拘束理由をめぐって憶測が飛びかっている。豪紙オーストラリアン(Australian)は、イスラエル軍ラジオ放送を引用して「国家に対する背信行為ではないか」と報道。一方、シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)は、ズィギヤー氏がオーストラリアの旅券をスパイ行為に利用した疑いで豪情報機関ASISの捜査対象となっていたと報じている。(c)AFP
オーストラリア放送協会(Australian Broadcasting Corporation, ABC)の報道によると、モサドの工作員だった「X」ことベン・ズィギヤー(Ben Zygier)氏(34)は2010年、イスラエル・テルアビブ(Tel Aviv)近郊の刑務所で死亡。イスラエル当局は同氏について報道管制を敷き、異例の長期間にわたって問題の隠ぺいを図ったとされる。
イスラエル政府は13日になって沈黙を破り、イスラエルとオーストラリアの二重国籍を持つ人物を独房に収容していたと認めた。イスラエル法務省の声明によれば、問題の人物は「外国籍も持つイスラエル人」で「安全保障上の理由から、身元情報を偽造して収容していた」が、この人物の家族には拘束されていることを伝えていたという。2年前に独房内で死亡しているのが見つかり、司法調査の結果、自殺と断定されたという。この人物の詳しい身元や拘束理由は明らかにしていない。
一方、オーストラリアのボブ・カー(Bob Carr)外相は当初、問題の人物の死後に初めて身柄を拘束されていたことを知ったと説明していたが、14日の議会委員会で、豪政府が拘束当時に情報を得ていたことを認めた。カー外相によると、「イスラエルの国家安全保障法に基づく深刻な違法行為に関係した人物の名前」がイスラエル当局から知らされ、豪政府は適切な身柄の取り扱いを保証するよう求めたという。
■ネットに一瞬だけ掲載され消えた「最高機密」、真相は?
「X」の存在は、イスラエルのニュースウェブサイト「Yネット(Ynet)」が2010年6月に掲載した記事で初めて明らかになった。この記事は「X」について、拘束の事実自体が最高機密扱いとされ、身元や拘束理由は刑務所の職員にも知らされていないと伝えたが、掲載直後に削除され、イスラエル国内では報道管制が敷かれた。
豪ABCの12日の報道によると、「X」はモサドに勧誘された豪メルボルン(Melbourne)出身のユダヤ系弁護士のベン・ズィギヤー氏で、2001年にイスラエルに移住した後はベン・アロン(Ben Alon)と名乗り、イスラエル人の妻と2人の子供がいたという。ズィギヤー氏はモサドで働いていたことから、その身柄が拘束されたことはイスラエル情報機関の最高機密の1つだったという。
ABCはズィギヤー氏の拘束理由に関しては不明だが、テルアビブ近郊のアヤロン(Ayalon)刑務所に実質的な孤立状態で収容されていたと説明。自殺防止のため最先端の監視システムが設置されていたにもかかわらず、2010年12月に独房内で首をつって死亡しているのが発見されたと報じている。
イスラエルのヘブライ語日刊紙ハーレツ(Haaretz)は、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相が12日、国内の報道機関各社の幹部を呼んで緊急の会議を行い、「特定の政府機関にとって恥となるような情報を公表しないよう」求めたことを明らかにするとともに、その政府機関がモサドであることを示唆した。しかし、その直後に国会議員3人が審議中にこの問題を取り上げたため、この「かん口令」は実質的に緩和されたことになった。
豪メディアでは、「X」の拘束理由をめぐって憶測が飛びかっている。豪紙オーストラリアン(Australian)は、イスラエル軍ラジオ放送を引用して「国家に対する背信行為ではないか」と報道。一方、シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)は、ズィギヤー氏がオーストラリアの旅券をスパイ行為に利用した疑いで豪情報機関ASISの捜査対象となっていたと報じている。(c)AFP