【1月29日 AFP】中国が国産大型輸送機「運20(Y20)」の試験飛行と弾道ミサイル迎撃実験に成功したことについて、中国国営メディアや専門家らは28日、中国の軍事力とその遠方への展開能力を増強する上で重要なステップだと論じた。
 
 昨年9月に同国初の空母を就役させたばかりの中国は26日、国産軍用輸送機として過去最大となる運20の初飛行を同国北西部で行い、晴れ渡った青空を飛ぶ重量感ある緑色の機体の写真を公開した。

 国営環球時報(Global Times)は「大きな一里塚だ」とたたえ、これによって中国の軍はロシア製の貨物機イリューシン(Ilyushin)Il-76に依存せずに済むようになるという軍事専門家の談話を引用した。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)によると、最大積載量は66トンの運20は、55トンの貨物を積載して中国西部から約4400キロメートル離れたエジプトのカイロ(Cairo)まで飛ぶことができる。中国軍が使用している最も重い戦車の輸送も十分可能で、ある専門家は「この大型輸送機によって国外におけるわが国の国益の保護が保証される」と述べている。

■「旧式エンジンで技術的に劣る」との指摘も

 一方、試験飛行は「大きなステップ」だとしながらも、他の軍用輸送機と比べて運20は技術的に劣ると指摘するのは、カナダを拠点とするオンライン軍事誌「漢和ディフェンスレビュー(Kanwa Defense Review、漢和防務評論)」のアンドレイ・チャン(Andrei Chang)編集長だ。

 チャン編集長は運20の実際の積載能力と航続距離は国営メディアが報じたものより劣っているだろうと言う。ロシアが設計した非常に古いエンジンを使っているため燃費が極めて悪いというのが理由だ。一部の先進国の騒音規制もクリアできず、欧州で行われる航空ショーに参加できない恐れもあるという。

 チャン編集長は、運20は世界最先端の輸送機とされる米ボーイング(Boeing)の軍用輸送機C17グローブマスターIII(Globemaster III)の特徴も取り入れているようだとしながらも、中国が生産に苦慮している軽量複合材の使用比率が多いC17の方がはるかに優れているだろうとも述べている。運20が実際の作戦で運用されるまでには、少なくともまだ5年はかかるとチャン編集長はみている。

■弾道ミサイル迎撃実験にも成功

 中国は、前週末に2010年に続き大陸間弾道ミサイルの迎撃実験にも成功したと発表した。国営新華社(Xinhua)通信は中国国防省高官の談話として「所期の目的を達成した」と伝え「実験は防衛的な性質のもので、他国を対象にしたものではない」と報じた。
 
 新華社は28日の論説記事で弾道ミサイル迎撃実験について、空母や大型輸送機などの「一連の軍備の進歩と並んで、国の安全を守り、潜在的な脅威を阻止する中国の能力が急成長していることを示すもの」だと称賛したが、軍備の進歩は純粋に防衛的なもので「根拠のない『中国脅威論』」は否定すると改めて強調した。

 中国が公表している軍事支出は経済成長に伴って2006年から2012年にかけて2倍以上に増え、アジアの近隣諸国を動揺させている。最近では東シナ海で、沖縄県の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)の領有権をめぐり日本と激しく対立している。(c)AFP/Tom Hancock