【1月16日 AFP】約4年間にわたって政情不安が続くアフリカ南東部マダガスカルのアンドリー・ラジョエリナ(Andry Rajoelina)暫定政府大統領(38)は15日、今年5月に実施予定の次期大統領選挙に出馬しない意向を表明した。

 同大統領の政敵で南アフリカに亡命中のマルク・ラベロマナナ(Marc Ravalomanana)前大統領(63)もすでに「不出馬」の意向を示している。しかし、互いの陣営に寄せる不信感はぬぐい切れておらず、政情安定化までには、まだ曲折があるとみられる。

 ラジョエリナ大統領は15日、テレビを通じて演説し、その中で「2000万人の国民のために一身を犠牲にする」と述べ、次期大統領選への不出馬を宣言した。続けて同大統領は「選挙で選ばれる次期大統領に全権を引き渡し、民主的政権移譲を実現させる」とも強調した。

 野党指導者だったラジョエリナ氏は2009年3月、大統領退陣を求めるデモが暴徒化したなか軍の支援を受けて当時のラベロマナナ大統領を辞任に追い込んで実権を握った。しかし、欧州諸国をはじめとする国際社会から「正統な政権」とは認められず、経済制裁を受けるなど厳しい国家運営を強いられてきた。

 これに対し15か国で構成する南部アフリカ開発共同体(Southern Africa Development CommunitySADC)などが現政権と前大統領陣営との仲介役を務めていた。今回の不出馬宣言について、レオニダス・テザプシディス(Leonidas Tezapsidis)駐マダガスカル欧州連合(EU)大使は、「なんであれ和平と鎮静化をもたらすならば喜ばしい」と述べた。大統領選の第1回投票は5月8日に行われる予定。

 しかし、ラベロマナナ陣営は「現大統領はSADCの勧告に従っただけで、正常化への本の一歩に過ぎず、やらねばならなことがまだある」と、今回の不出馬宣言を冷ややかに受け止めている。15日には大統領選に先立って議会選が実施されることも発表されたが、これについてラベロマナナ陣営は「ゲームの途中でルールを変えるようなもの」としており、暴力が再燃する可能性も大きい。

 ラベロマナナ前大統領はこれまでに数回、亡命先の南アフリカから帰国を試みたが、いずれも不成功に終わっている。(c)AFP/Gaelle Borgia