【12月28日 AFP】パキスタンのベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相が暗殺されてから5年を迎えた27日、息子のビラワル・ブット・ザルダリ(Bilawal Bhutto Zardari)氏(24)がブット家の墓所で、政界進出を表明した。母の遺志を継いで民主主義のために戦うと誓っている。

 2度にわたり首相に選出されたブット元首相は2007年12月27日、パキスタン軍の拠点ラワルピンディ(Rawalpindi)で選挙集会を終えた直後に銃撃や自爆攻撃による襲撃を受け、命を落とした。ブット元首相殺害の罪で有罪判決を受けた者はこれまで誰1人としていない。

 元首相の命日である27日、シンド(Sindh)州ガリ・コダー・バクシュ(Garhi Khuda Bakhsh)にあるブット家の墓所には、その死を悼む20万人以上の支持者らが集まった。警官1万5000人、治安部隊500人による厳重な警備体制の中、3代連続の政界入りを目指すビラワル氏は初めての大々的な演説を行い、貧しい人々のために「反民主主義勢力」と戦っていくと述べた。 「ブットとは、ある1つの感情──愛なのだ」 「全ての挑戦が、血塗られている。だが、おまえたち(反民主主義勢力)はいずれ敗者になる。ブットを何人殺そうとも、新しいブットはどの家からでも誕生するのだ」

 ブット一族は65年前のパキスタン建国以来、ほぼ一貫して政界に影響力を持ち続けてきた。ブット元首相の父でパキスタン人民党(PPP)を結成した故ズルフィカル・アリ・ブット(Zulfikar Ali Bhutto)氏は1971年に首相に就任。77年に軍事クーデターで失脚した後、政敵の殺害を命じた罪で79年に絞首刑に処されている。

 ビラワル氏は英オックスフォード大学(Oxford University)で学び、母の死後、父のアシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)大統領と共同でPPP総裁を務めてきた。パキスタンの被選挙権は満25歳以上に限られているため、来年4月に行われる次の総選挙には立候補できないが、不人気の父親に代わってPPPの選挙戦を率いると目されている。(c)AFP/Hasan Mansoor