【12月18日 AFP】保守派の指導者、安倍晋三(Shinzo Abe)自民党総裁の復活に、米政府では日米間の安全保障の緊密化への期待が高まっている──しかし一方では、その「強硬な思想」を全面に押し出すことに、米政府高官らは警戒感を抱いているのも事実のようだ。

 衆院選での自民党の圧勝を受けて、安倍氏は12月26日に首相に指名される見通し。安倍氏は、戦後の平和憲法の改正論者で、より手短な策として、防衛費の増額や日米軍事協力の強化などに乗り出す可能性もある。

 発足当時の民主党政権は、バラク・オバマ(Barack Obama)米政権とのあつれきが見られたが、その後は関係を大幅に改善させていた。だが安倍新政権は、米軍配備に対してより協力的であるとみられ、また、尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)をめぐり悪化する対中関係についても妥協しない考えを表明している。

 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のアジア担当上級副所長、マイケル・グリーン(Michael Green)氏は、安倍氏の勝利は米国にとって「総体として良い」と評価し、日中関係の安定化をももたらす可能性があると語った。

「中国は、日本に圧力をかける戦術が奏功していると考えている。その考えを捨てさせるのが重要だ」

 しかし、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前米大統領のアジア担当補佐官を務めたグリーン氏は、2期目のオバマ政権が、タカ派化した日本という「メディアの描いた単純化された概念」を採用し、安倍氏を孤立させる可能性もあると指摘する。

「オバマ政権が日本の右傾化に対処するために日中関係の仲裁に入れば、政権は対日関係でも対中関係でも失敗するだろう」

 一方でグリーン氏は、感情的になりがちな歴史問題で安倍氏が強硬姿勢を貫けば、米国のアジアでの優先事項──とりわけ同盟国の日本と韓国との関係──は妨げられるだろうと指摘する。

 外交政策分析研究所(Institute for Foreign Policy AnalysisIFPA)アジア太平洋研究部門主任のウェストン・コニシ(Weston Konishi)氏も、「米政策立案者らの間では、彼(安倍氏)の歴史修正主義的な傾向が域内で新たな緊張をもたらすという懸念がある。だが最近の彼の発言は、そのような不安を払しょくしようと、少なくとも試みてはいる」と語る。

「彼(安倍氏)が極めて責任ある対応を行うことが期待されているだろう」

 安倍氏は国内から、近隣諸国の反感を買わないようにと圧力を受けるとみられる。日本の実業界は近隣国との緊張に警戒感を抱いており、また安倍氏の政権は平和主義の考えを持つ公明党との連立政権になる。

 コニシ氏は、米国内には自民党の復権を支持する声もあるだろうが、オバマ政権が民主党と強い関係を構築してきたことを付け加えた。

 米ホワイトハウス(White House)によれば、オバマ大統領と安倍総裁は17日に話し、「(アジア)地域の平和と安全保障の土台としての日米同盟の重要性」を再確認したという。

 米国防総省の元高官で、現在は米シンクタンク、カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)の上級客員研究員のジェームス・ショフ(James Schoff)氏は、安倍氏の防衛関係の取り組みは、日本が米国を補完する役割を担うのであれば「全員にとって総体として利益」になる可能性があると述べる。

「だが中国に対抗して、攻撃能力の向上が重視されるようだと、米国の観点からみれば利益よりも問題の方が多くなるだろう」とショフ氏は述べた。(c)AFP/Shaun Tandon