【12月5日 AFP】エジプト・カイロ(Cairo)で4日、ムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)大統領の権限拡大に反発する多数のデモ隊が大統領府を取り囲んだ。

 デモ参加者らは大統領府から数百メートル離れた場所に張られていた有刺鉄線を切断して大統領府に向かった。警官隊は催涙弾を発射して対応したが最終的には後退し、デモ隊が大統領府を囲む塀にたどり着くのを許した。

 大統領府にたどり着いたデモ隊は「政権打倒」と叫びながらエジプト国旗を振り、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)前大統領の長期政権を倒した前年の「革命」を売り渡したとして、モルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)を非難した。

 モルシ大統領は大統領府にいたが、警備関係者によると大統領は公務の会議を終えて予定通り大統領府を出たという。大統領府を包囲したデモ隊は午後11時(日本時間5日午前6時)近くになってようやく立ち去り始めた。

 地中海の港湾都市アレクサンドリア(Alexandria)やエジプト中部のソハーグ(Sohag)県でもモルシ大統領に対する抗議行動が行われた。

■憲法草案が政治的対立の焦点に

 モルシ大統領が11月22日に布告した大統領令によって大統領権限が拡大されたとともに、12月15日に新憲法の最終草案の是非を問う国民投票が行われることになったことを受けて、エジプトではストライキや暴力的な抗議行動が相次いでいる。

 リベラル派、左派、キリスト教徒は新憲法草案に反対しており、イスラム勢力と、おおむね世俗的な野党勢力の間で憲法は政治的・イデオロギー的な対立の焦点になっている。

 拡大する混乱について米国務省のマーク・トナー(Mark Toner)副報道官は「抗議行動参加に参加する人たちには平穏に抗議行動を行う環境が与えられているのだから、平穏に意思を表明して欲しい」と述べて自制を求めた。(c)AFP/John Davison