【7月12日 AFP】米大統領選で11日、黒人有権者に向けた演説でバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の医療保険改革法を批判した共和党候補のミット・ロムニー(Mitt Romney)氏が、聴衆から一斉にブーイングを受けた。

 テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)で行われた、米最大の市民権団体、全米黒人地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored PeopleNAACP)の集会で演説したロムニー氏は果敢にも、初の黒人大統領となったオバマ大統領に対する厳しい批判を繰り広げた。

 同氏が雇用について話している間は控えめな拍手が起きていたものの、オバマ大統領によって米経済が「アフリカ系米国人にとって、ほぼ全ての面で悪化した」との批判を始めると、聴衆の一部は不快感を示した。

 そして批判がオバマ大統領の医療保健改革(通称オバマケア、Obamacare)に移ると、これまでの選挙活動では見られなかったほどの激しい反発の声が浴びせられた。ロムニー氏の「高価で不必要な政策」などの発言に対し、聴衆からはブーイングが巻き起こり、20秒以上おさまることはなかった。

 演説の数時間後に行われたFOXニュース(Fox News)とのインタビューの中でロムニー氏は、「(聴衆の反発は)もちろん予期していたが、全国の国民に対し発信しているのと同じメッセージをNAACPに対しても発信する」と語っている。

 オバマ大統領は、11月の選挙で黒人層からの支持を広く得ると予想されている。だが勝負の分かれ目となるのは、フロリダ(Florida)州やノースカロライナ(North Carolina)州などの、有権者の支持が共和党と民主党の間で揺れる「スイング・ステーツ」でロムニー氏がどこまで黒人票を獲得できるかだ。

 ロムニー氏のNAACPでの演説は、元実業家で大富豪というバックグラウンドを持ち、一般市民の共感を得るのが難しいとされる同氏が、より広い支持層を獲得するための戦略だとみられている。

 だがロムニー氏には困難な戦いが待ち受けている。幾つかの州では、投票の際に政府発行の身分証明書の提示を義務化する動きが共和党主導で行われており、もともと民主党寄りの傾向がある非白人層や貧困層からは反発が強い。また、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権時代に導入された減税を富裕層も含めた全ての国民に適用するとも宣言していることで、労働階級の票が離れる可能性もある。(c)AFP/Nicholas Kamm