【6月29日 AFP】米連邦最高裁は28日、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の医療保険改革法を合憲とする判断を下した。11月の大統領選で再選を目指すオバマ大統領にとって追い風になった。

 フロリダ(Florida)州など26州が個人に医療保険加入を強制するのは連邦議会の権限を逸脱しているとして訴えていた。2014年以降はほとんど全ての米国民に保険加入を義務付け、加入しない場合は罰金を科すという条項が焦点になっていたが、最高裁の9人の判事は5対4の僅差で合憲と判断した。

 民主党員から嫌われていた保守派のジョン・ロバーツ(John Roberts)最高裁長官が合憲支持に回り、一躍ヒーローになった。意見書の中で同長官は、保険加入義務化を連邦政府の徴税権と考えれば、連邦議会がそのような条項を米50州に課すことは合憲だと述べた。

 一方で最高裁は、所得が低い1600万人にも医療保険を拡大するという条項は、これに従わない州にメディケイド(Medicaid、主に低所得者を対象にした米国の公的医療保険制度)に出した資金を連邦政府が引き揚げるという条件を撤回する場合に限り合憲という制約を付けたが、オバマ政権が懸念していた医療保険改革法全体が違憲とされる結果は避けられた。

 オバマ大統領は、この決定は米国に生きる全ての人にとって勝利だと述べて最高裁の判断を歓迎した。一方、医療保険改革法は大きな政府を志向する無駄にほかならず、保険料の上昇と医療の質の低下につながりかねないと批判してきた共和党は今後も反対していく姿勢を示し、7月11日に下院でこの法律の廃止法案を採決すると発表した。しかし民主党が過半数を占める上院では否決される見通しだ。

 問題の大きさを反映して、最高裁の9人の判事は3月下旬、3日間にわたって6時間近い議論を行った。1つの案件にこれほどの時間をかけたのはこの45年ほどでは例がない。米国は経済的に世界で最も繁栄した国だが、先進工業国としては唯一、全国民を対象とする医療保険制度がない。(c)AFP/Chantal Valery