【4月16日 AFP】東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故発生以降、原発の安全性が疑問視される中で停止中の原発2基を再稼働するとした政府の計画は15日、報道各社および環境保護団体から強い非難を浴びた。

 野田佳彦(Yoshihiko Noda)首相は13日、関係3閣僚と会合を開き、福井県おおい町にある関西電力の大飯(Oi)原子力発電所3、4号機の再稼働については、夏季の電力供給不足に対応するために必要との政治判断を下した。

 国内54基中の原発のうち、現在稼働しているのは北海道電力の泊(Tomari)原発3号機のみ。だが、5月にはこれも定期検査のために停止する。

 大飯原発の2基を再稼働させることは、国内の全原発停止という状況の回避を意味する。また、原子力は火力よりも低コストでの発電が可能ともされている。

 だが、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)ジャパンの活動家、花岡和佳男(Wakao Hanaoka)氏は、複数の独自調査で(伝えられているような)電力不足は起こらないとの結果が示されていると指摘。野田首相と関西電力は、いたずらに原発の再稼働を急いでいると批判した。花岡氏によれば、大飯原発が満たしているという再稼働の条件は非常に手ぬるいものだという。

 政府は6日、原発再稼働の条件となる暫定の新安全基準を策定。福島第1原発事故を招いた大規模自然災害にも耐えうるとした基準を設けた。ただ大飯原発の再稼働には、地元および周辺自治体などの理解が必要で、原発の安全性に対する市民の不信感も依然として強い。

 こうした状況を背景に枝野幸男(Yukio Edano)経済産業相は14日、福井県の西川一誠(Issei Nishikawa)知事に大飯原発3、4号機の再稼働を要請したが、知事は即答を避けた。

 毎日新聞(Mainichi Shimbun)は15日の社説で、「なぜ政府は、これほど関西電力大飯原発の再稼働を急ぐのか、理解に苦しむ」とし、安全性を確認するためにはさらなる検証が必要との見解を示した。また朝日新聞(Asahi Shimbun)も同日、新安全基準については、再稼働に異議を唱える市民らの理解を得られるかは分からないと伝えている。

 一方、15日の産経新聞(Sankei Shinbun)「主張」欄は、再稼働に肯定的な論調ながらも、野田首相が福井県に足を運び「国のエネルギー政策と原発再稼働の必要性を自らの言葉ではっきり語るべきだ」と首相に強く求めた。(c)AFP