連邦議員になるスー・チーさん、日常的課題に追われる?専門家
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【4月4日 AFP】1日に行われたミャンマー連邦議会の補欠選挙で当選した民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)さん(66)に大きな期待が集まっている。しかし専門家たちは、スー・チーさんが大きな政治目標ではなく、もっと日常的な課題に取り組まざるを得なくなるかもしれないと語っている。
軍事政権に対する反体制派の精神的支柱であってきたスー・チーさんはこれから、農民を助け、投資を促進し、軍政の下で約50年に及んだ誤った経済政策からミャンマーを脱出させ、発展させるために、かつての敵ともテーブルに着かねばならないだろう。
香港大学(University of Hong Kong)のルノー・エグレトー(Renaud Egreteau)准教授(政治学)は「大臣としてであれ、一般議員としてであれ、政治的な駆け引きをする余地は、在野の反対派だったときよりも小さくなるだろう」と語る。
スー・チーさんが率いる国民民主連盟(National League for Democracy、NLD)が今回の補選で争われた44議席を全て獲得したとしても、軍を後ろ盾に議会で圧倒的な議席を持つ与党・連邦団結発展党(Union Solidarity and Development Party、USDP)の優位は揺るがない。さらに議会の議席の4分の1は、選挙で選ばれたのではない軍高官で占められている。
しかし20年ぶりの総選挙が行われてからこの半年で、国家予算や医療、中国のエネルギープロジェクトなど多岐にわたる問題を扱ってきた連邦議会にスー・チーさんは初めて議席を持つことになる。
タイのシンクタンク「Vahu Development Institute」のミャンマー専門家、アウン・ナイン・ウー(Aung Naing Oo)氏は「USDPが支配する現在の議会は非常にエネルギッシュで、この1年で素晴らしい成果を上げてきた。だが議会が取り組む課題は、一般国民が心配するきわめて日常的な問題だ」と言う。そしてスー・チーさんは選挙運動中は民主主義や憲法改正などの大きなテーマをうたってきたが、それよりもむしろ毎日の問題に取り組まなければならないだろうと指摘する。「わが国にとって最も重要なのは経済だが、アウン・サン・スー・チーには経済の実績がない」
■入閣はありか?
スー・チーさんが政府の要職に就くのかどうかも大きな問題だ。1月、ナイ・ジン・ラット(Nay Zin Latt)大統領顧問はAFPに対し、スー・チーさんが閣僚として指名される可能性はあると語っていた。しかしそうした可能性に言及した政府高官は他にいない上、スー・チーさん本人も3月30日、大臣就任を打診されても、それを受ければ法律上、議席をあきらめなければならないので入閣する意志はないと話している。
もっともスー・チーさんが、例えば国内の民族紛争などを担当する何らかの役割を引き受けようとする可能性はある。
アウン・ナイン・ウー氏は、どのような役割を選ぶにせよ、スー・チーさんは自分の名声や影響力を用いるだろうが、信念を変えようとしない不屈の性格が問題となる恐れもあると指摘する。「彼女の個性や意思の強さは、一部の人々にとって諸刃の剣のようなものだ。彼女自身が問題になる恐れもある。議会にせよ政府内にせよ、未知の大海の中でどのようにうまく自分らしさを出していくか、それが鍵になるだろう」
過去にはスー・チーさんが軍政に譲歩しなかったことが、野党と軍政の行き詰まりを招いたと批判されたこともあった。
しかし、スー・チーさんを政敵と捉えていたタン・シュエ(Than Shwe)前国家平和発展評議会(SPDC)議長は1年前にその地位を退き、新世代の指導部はスー・チーさんにより好意的な姿勢を取っている。
タイ・チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)の政治学者Thitinan Pongsudhirak氏は、「いかなる民主主義も1人の人間の周りに形作られるものではない」と言う。「スー・チーさん個人だけに焦点を合わせるところから、彼女の支持者や彼女を補佐する人たち、彼女の政党、そして与党や現政権を含めたミャンマーの民主主義機構へと考えを広げるところへシフトする必要がある」(c)AFP/Didier Lauras
軍事政権に対する反体制派の精神的支柱であってきたスー・チーさんはこれから、農民を助け、投資を促進し、軍政の下で約50年に及んだ誤った経済政策からミャンマーを脱出させ、発展させるために、かつての敵ともテーブルに着かねばならないだろう。
香港大学(University of Hong Kong)のルノー・エグレトー(Renaud Egreteau)准教授(政治学)は「大臣としてであれ、一般議員としてであれ、政治的な駆け引きをする余地は、在野の反対派だったときよりも小さくなるだろう」と語る。
スー・チーさんが率いる国民民主連盟(National League for Democracy、NLD)が今回の補選で争われた44議席を全て獲得したとしても、軍を後ろ盾に議会で圧倒的な議席を持つ与党・連邦団結発展党(Union Solidarity and Development Party、USDP)の優位は揺るがない。さらに議会の議席の4分の1は、選挙で選ばれたのではない軍高官で占められている。
しかし20年ぶりの総選挙が行われてからこの半年で、国家予算や医療、中国のエネルギープロジェクトなど多岐にわたる問題を扱ってきた連邦議会にスー・チーさんは初めて議席を持つことになる。
タイのシンクタンク「Vahu Development Institute」のミャンマー専門家、アウン・ナイン・ウー(Aung Naing Oo)氏は「USDPが支配する現在の議会は非常にエネルギッシュで、この1年で素晴らしい成果を上げてきた。だが議会が取り組む課題は、一般国民が心配するきわめて日常的な問題だ」と言う。そしてスー・チーさんは選挙運動中は民主主義や憲法改正などの大きなテーマをうたってきたが、それよりもむしろ毎日の問題に取り組まなければならないだろうと指摘する。「わが国にとって最も重要なのは経済だが、アウン・サン・スー・チーには経済の実績がない」
■入閣はありか?
スー・チーさんが政府の要職に就くのかどうかも大きな問題だ。1月、ナイ・ジン・ラット(Nay Zin Latt)大統領顧問はAFPに対し、スー・チーさんが閣僚として指名される可能性はあると語っていた。しかしそうした可能性に言及した政府高官は他にいない上、スー・チーさん本人も3月30日、大臣就任を打診されても、それを受ければ法律上、議席をあきらめなければならないので入閣する意志はないと話している。
もっともスー・チーさんが、例えば国内の民族紛争などを担当する何らかの役割を引き受けようとする可能性はある。
アウン・ナイン・ウー氏は、どのような役割を選ぶにせよ、スー・チーさんは自分の名声や影響力を用いるだろうが、信念を変えようとしない不屈の性格が問題となる恐れもあると指摘する。「彼女の個性や意思の強さは、一部の人々にとって諸刃の剣のようなものだ。彼女自身が問題になる恐れもある。議会にせよ政府内にせよ、未知の大海の中でどのようにうまく自分らしさを出していくか、それが鍵になるだろう」
過去にはスー・チーさんが軍政に譲歩しなかったことが、野党と軍政の行き詰まりを招いたと批判されたこともあった。
しかし、スー・チーさんを政敵と捉えていたタン・シュエ(Than Shwe)前国家平和発展評議会(SPDC)議長は1年前にその地位を退き、新世代の指導部はスー・チーさんにより好意的な姿勢を取っている。
タイ・チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)の政治学者Thitinan Pongsudhirak氏は、「いかなる民主主義も1人の人間の周りに形作られるものではない」と言う。「スー・チーさん個人だけに焦点を合わせるところから、彼女の支持者や彼女を補佐する人たち、彼女の政党、そして与党や現政権を含めたミャンマーの民主主義機構へと考えを広げるところへシフトする必要がある」(c)AFP/Didier Lauras