【3月12日 AFP】10日にシリア入りしていた国連(UN)とアラブ連盟(Arab League)のシリア特使、コフィ・アナン(Kofi Annan)前国連事務総長は11日、流血の事態を終わらせる合意を得ることなく、首都ダマスカス(Damascus)を後にした。

 アナン氏は10、11日にバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領と会談し、流血の事態を終わらせるための「具体的な提案」を示したと述べた。

 アナン氏は記者団に「非常に難しい状況だが、われわれは希望を持たなくてはならない。私は楽観的にみている」と述べるとともに、「状況は非常に悪く危険なので、われわれには失敗が許されない」と、速やかに打開策を見出す必要性を強調した。

 アサド大統領はアナン氏との10日の会談で、暴力をあおる「テロリストのグループ」が解体しない限り対話はありえないと主張した。一方、アナン氏と会談した反体制派は、政府軍部隊の撤退が政府との交渉の前提だという姿勢を崩さなかった。

 シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、アナン氏訪問中の2日間に、政府軍と反体制派の戦闘で、北西部のイドリブ(Idlib)を中心に、集中砲火を浴びた民間人61人を含む150人以上が死亡した。11日は中部のハマ(Hama)やダマスカス近郊で戦闘があったという。

 米ニューヨーク(New York)の国連外交筋は、アナン氏とアサド大統領の1度目の会談が終わってからわずか数時間後の10日夜に政府軍がイドリブを攻撃したことから、今回のアナン氏の訪問で成果が得られる可能性は低いとの見方を示していた。

 シリアの隣国、トルコの首都アンカラ(Ankara)でAFPの取材に応じたトルコ政府関係者は、10日以降少なくとも189人のシリア人がイドリブの戦闘を逃れてトルコ国内に入り、その数は増えつつあると述べた。(c)AFP