【3月5日 AFP】東日本大震災から間もなく1年を迎えるにあたり、野田佳彦(Yoshihiko Noda)首相は3日に首相官邸で行った外国プレスとの会見で、原子炉がメルトダウン(炉心溶融)にまで至った福島第1原子力発電所の事故について「誰の責任というよりも、責任は共有しなければいけない」と語った。

 東日本大震災では約1万9000人が死亡・行方不明となり、避難・転居者数も34万人を超えた。うち、福島第1原発の事故では放射能で陸地や海が汚染され、何万人もの住民が避難を余儀なくされた。
 
 首相就任から約半年が経った野田首相は、日本の権力者たちが原発にまつわる「安全神話」を信じすぎ、福島第1原発で起きたような大規模事故に対する準備ができていなかったと述べた。

 首相は、日本の法律下での一義的な責任は運営事業者である東京電力(TEPCO)にもちろんあるとしながらも、メルトダウンに関する刑事責任については次のように述べて退けた。「政府も、事業者も、あるいは学問の世界においても、安全神話に浸りすぎていたということは総括として言えるだろうと思う。誰の責任というよりも、誰もがその痛みは、責任は共有しなければいけないんだろうと思う」

 また福島の事故からは、津波の被害を受ける可能性のある屋外に動力源を設置しないなど、さまざまな教訓が得られ、現在もそうした教訓を学んでいると語った。

 日本国内の商用原子炉54基のうち、現在も運転しているのは2基のみだが、原発の安全性への懸念から運転再開には地元社会の反対が根強い。野田首相は、多くのエネルギーを必要とする日本は原発依存から脱却し、中~長期的には原子力発電に頼る必要のない社会を作るべきだとしながらも、原子力エネルギーを放棄するという約束は口にしなかった。

 代わりに野田首相は多様な発電方法の組み合わせについて触れ、「ベストミックスというものについては間もなく、その選択肢を国民の皆さまに示したいと思う。そして年の半ば、夏をめどにその戦略と方向性を固めていきたい」と語った。

 震災からの復興については順調に進展していると述べつつ「残念ながら、まだ行き届いていないとか、遅いというご批判は、これは甘んじて受けなければなりません」とコメント。今後5年間かけ集中的に復興を進め、10年以内に完了しなくてはならないと述べた。(c)AFP/Huw Griffith