「米・イラン戦争」は起きるのか?過熱する米政界
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【1月5日 AFP】大統領選の年を迎えた米政界周辺で、関係が緊張しきっているイランと戦争になる可能性に言及する発言が盛んに発せられている。
対イラン開戦論は米国内ではしばしば現れては消える話題だが、さまざまな条件が重なっている今回こそは、必然であれ偶然であれ「戦争が差し迫っている」との悲観的予測が米政界に広がっている。
■強硬論の共和党タカ派、武力行使に慎重な軍
イラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)旧政権を「差し迫った脅威」だと声高に主張し、早急な軍事行動の必要性を説いた共和党タカ派の論客たちが今回も、民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領を意気地なしと批判しつつ、米国は対イラン戦に備えるべきだと唱えている。
その1人が、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領の共和党政権下で大統領権限の強化とテロ容疑者の権利の否定を押し進めた米司法省元高官、ジョン・ヨー(John Yoo)氏だ。同氏は前週の保守系言論誌「ナショナル・レビュー(National Revie)」に寄せた論文で、共和党の大統領選候補者たちに向け、「イランの核計画を破壊する軍事攻撃への備えは必須」だと忠告。「イランの核兵器を破壊することは、わが国の自衛と国際安全保障の組み合わせ」だと論じうるとの観点から、攻撃に法的根拠をもたせうると述べた。米軍によるイラク侵攻の前にも盛んに論じられた主張だ。
米議員や政治評論家の間では、イランに核爆弾を持たせないためには2013年のいずれかの時点で、経済制裁による外交圧力を放棄して爆撃を選択せざるを得ないとの警戒感がある。共和党議員らはさらに、米国が軍事行動に出るならば核施設に狙いを絞った数回の「外科的」攻撃よりも、もっと広範囲な作戦の必要があるだろうと見ている。
共和党のリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は前年11月、米CBSテレビの番組で次のように力説した。「(イランの軍事)能力は有り余るほどで、核施設を狙うだけでは不十分だ。現政権を去勢し、空軍を壊滅させ、海軍を沈め、革命防衛隊(Revolutionary Guards)を狙い、イラン国民に政権を転覆させなければならない。必要なのは体制変革だ。彼らが核兵器を手にしたら、世界は暗黒となる」
一方、共和党議員らの強硬論と対照的に、国防総省や米軍高官からはイランを空爆してもせいぜい核開発を数年遅らせる程度の効果しかなく、リスクが大きすぎるとの警告が繰り返し出されている。
■強硬路線、続ければ「意図せぬ戦争に」
軍事力行使に反対する評論家たちは、圧力と制裁ばかりを重視した戦略では外向努力による危機脱出の余地が残らず、イランとの戦争へとなだれ込んでしまいかねないと危惧する。
全米イラン系アメリカ人評議会(National Iranian American Council)のトリタ・パルシ(Trita Parsi)会長は、「わが国は悪循環のエスカレートにはまっている。この道を進み続ければ、戦争へと迷い込んでいくだろう」と警鐘を鳴らす。
同氏は、オバマ政権は外交的アプローチを諦めるのが早すぎたと指摘。その理由の1つとして09年、イラン大統領選の結果を受けたイラン改革派の抗議デモに対するアフマディネジャド政権の弾圧が激化し、イランとの開かれた対話を模索することが不可能になってしまったことを上げている。同氏によればオバマ大統領は、90年代に対イラク制裁に効果がないと共和党に批判された民主党のビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領と同様の政治的圧力に直面しているのだ。
70年代の民主党ジミー・カーター(Jimmy Carter)政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキー(Zbigniew Brzezinski)氏も、意図せぬ戦争へとなだれ込んでいく危険性を懸念している。「強制的な措置に訴えれば戦争を避けられると我々は思っている。しかし、強制的な方向へ傾けば傾くほど、それに効果がなかった時に残る選択肢が戦争だけになる。選択肢が驚くほど狭められてしまうのだ」
米軍制服組トップの統合参謀本部議長だったマイケル・マレン(Mike Mullen)提督は、退任直前の前年9月末、米イラン両国の軍の間に交流が一切ないため、突発的な事件から戦争へ突き進んでしまいかねないとの危惧を表明した。「わが国はイランに対話を呼びかけていない。したがって互いを理解していない。何かが起きた際、ほぼ確実に我々は事態を正しく把握できず、そこに誤算が生じるだろう」
(c)AFP/Dan De Luce
対イラン開戦論は米国内ではしばしば現れては消える話題だが、さまざまな条件が重なっている今回こそは、必然であれ偶然であれ「戦争が差し迫っている」との悲観的予測が米政界に広がっている。
■強硬論の共和党タカ派、武力行使に慎重な軍
イラクのサダム・フセイン(Saddam Hussein)旧政権を「差し迫った脅威」だと声高に主張し、早急な軍事行動の必要性を説いた共和党タカ派の論客たちが今回も、民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領を意気地なしと批判しつつ、米国は対イラン戦に備えるべきだと唱えている。
その1人が、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領の共和党政権下で大統領権限の強化とテロ容疑者の権利の否定を押し進めた米司法省元高官、ジョン・ヨー(John Yoo)氏だ。同氏は前週の保守系言論誌「ナショナル・レビュー(National Revie)」に寄せた論文で、共和党の大統領選候補者たちに向け、「イランの核計画を破壊する軍事攻撃への備えは必須」だと忠告。「イランの核兵器を破壊することは、わが国の自衛と国際安全保障の組み合わせ」だと論じうるとの観点から、攻撃に法的根拠をもたせうると述べた。米軍によるイラク侵攻の前にも盛んに論じられた主張だ。
米議員や政治評論家の間では、イランに核爆弾を持たせないためには2013年のいずれかの時点で、経済制裁による外交圧力を放棄して爆撃を選択せざるを得ないとの警戒感がある。共和党議員らはさらに、米国が軍事行動に出るならば核施設に狙いを絞った数回の「外科的」攻撃よりも、もっと広範囲な作戦の必要があるだろうと見ている。
共和党のリンゼー・グラム(Lindsey Graham)上院議員は前年11月、米CBSテレビの番組で次のように力説した。「(イランの軍事)能力は有り余るほどで、核施設を狙うだけでは不十分だ。現政権を去勢し、空軍を壊滅させ、海軍を沈め、革命防衛隊(Revolutionary Guards)を狙い、イラン国民に政権を転覆させなければならない。必要なのは体制変革だ。彼らが核兵器を手にしたら、世界は暗黒となる」
一方、共和党議員らの強硬論と対照的に、国防総省や米軍高官からはイランを空爆してもせいぜい核開発を数年遅らせる程度の効果しかなく、リスクが大きすぎるとの警告が繰り返し出されている。
■強硬路線、続ければ「意図せぬ戦争に」
軍事力行使に反対する評論家たちは、圧力と制裁ばかりを重視した戦略では外向努力による危機脱出の余地が残らず、イランとの戦争へとなだれ込んでしまいかねないと危惧する。
全米イラン系アメリカ人評議会(National Iranian American Council)のトリタ・パルシ(Trita Parsi)会長は、「わが国は悪循環のエスカレートにはまっている。この道を進み続ければ、戦争へと迷い込んでいくだろう」と警鐘を鳴らす。
同氏は、オバマ政権は外交的アプローチを諦めるのが早すぎたと指摘。その理由の1つとして09年、イラン大統領選の結果を受けたイラン改革派の抗議デモに対するアフマディネジャド政権の弾圧が激化し、イランとの開かれた対話を模索することが不可能になってしまったことを上げている。同氏によればオバマ大統領は、90年代に対イラク制裁に効果がないと共和党に批判された民主党のビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領と同様の政治的圧力に直面しているのだ。
70年代の民主党ジミー・カーター(Jimmy Carter)政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキー(Zbigniew Brzezinski)氏も、意図せぬ戦争へとなだれ込んでいく危険性を懸念している。「強制的な措置に訴えれば戦争を避けられると我々は思っている。しかし、強制的な方向へ傾けば傾くほど、それに効果がなかった時に残る選択肢が戦争だけになる。選択肢が驚くほど狭められてしまうのだ」
米軍制服組トップの統合参謀本部議長だったマイケル・マレン(Mike Mullen)提督は、退任直前の前年9月末、米イラン両国の軍の間に交流が一切ないため、突発的な事件から戦争へ突き進んでしまいかねないとの危惧を表明した。「わが国はイランに対話を呼びかけていない。したがって互いを理解していない。何かが起きた際、ほぼ確実に我々は事態を正しく把握できず、そこに誤算が生じるだろう」
(c)AFP/Dan De Luce