【12月24日 AFP】北朝鮮の故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の長男で、かつては後継者と目されていた金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong-Nam)氏(40)の動向は、金総書記の死後、さまざまな憶測を呼んでいる。

 金正男氏は2001年、偽造旅券で日本に入国しようとして強制送還され、家族を東京ディズニーランド(Tokyo Disneyland)に連れて行きたかったと語っていた。その後は、中国のカジノ中心地のマカオ(Macau)を中心に優雅な隠とん生活を送っているとされている。

 父・金正日総書記と北朝鮮の支配階級から追放された金正男氏は、2009年以降、弟である金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)氏が父の後継者になるべく育てられるのを、遠くの地から眺めていた。

 その金正男氏の動向は、19日の金総書記の死亡発表以降、権力継承という微妙な時期における北朝鮮政権の策謀を知る手がかりになるのではないかと、注目されてきた。だが、在マカオの観測筋によると、金正男氏の消息が分からなくなっているという。

「(正男氏は)各地を転々としている。追跡は困難だ」と、マカオでの金正男氏の動向を追ってきたマカオクローサー(Macau Closer)誌の発行者、リカルド・ピント(Ricardo Pinto)氏は語る。「自宅で過ごすときもあれば、ホテルに滞在するときもある。いまどこに住んでいるのかわからない」

 金正男氏が公の場に最後に登場したのはことし1月、中国南部で東京新聞(Tokyo Shimbun)の取材に応じたときだった。正男氏は同紙に対し、「中国の故毛沢東(Mao Zedong)主席でさえ世襲をしなかった」と述べ、金正日総書記も3代世襲には反対との見解を述べていた。

 金正男氏は、1月の東京新聞の取材にピンク色のシャツに黒いジャケット、茶色のサングラスをかけて登場し、「三代世襲は社会主義理念とは合わないと、私は以前も指摘した。父もそう言って反対していた」「体制の安全のために三代世襲を行うしかなかったのではないか」と述べた上で、北朝鮮の不安定化は「周辺の不安定」につながると警告していた。

 専門家らは、金正恩氏が、父親とは違い西側で生活した経験を持つことを指摘し、権力継承が改革や外交関係改善につながる可能性もあるとみている。(c)AFP/Beh Lih Yi

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