【12月17日 AFP】開発日程が何度も延期されている米軍の次世代主力戦闘機F35(F-35 Joint Strike FighterJSF)ライトニングII(Lightning II)に試験飛行段階で複数の技術的問題が確認され、同型機の生産ペースを落とすことを米国防総省が検討していることが、国防総省の内部報告書から明らかになった。

■5つの技術的問題

 F35計画の「クイックルック・レビュー」と題されたこの内部報告書は、米国の独立系ウェブサイト「政府監視プロジェクト(Project On Government OversightPOGO)」で13日に公開された。史上最もコストの高い兵器計画であるF35について5つの技術的問題点を挙げ、その影響は把握できているが解決されていないと記している。

 指摘された問題点は、パイロットのヘルメットに搭載されるディスプレーの不調、燃料放出装置から放出した燃料の機体表面への付着、統合電気系統の安全性の懸念、空母搭載型のアレスティング・フック(着艦拘束装置)の不備など。アレスティング・フックは空母への着艦試験の際に正しく作動しなかったという。

 これ以外にも機体の疲労や振動など3つの問題があり、こちらも大きな支障を生じる可能性があるという。これらの技術的問題は「設計の確かさに対する信頼を喪失させる」と指摘し、「調達・生産計画の真剣な見直し」が必要だと要請している。

 F35計画の担当報道官は、明らかになった問題点を是正する時間をとるために生産ペースを落とすことが検討されていると認めた。具体的な数字などは明らかにしなかったが、F35の製造メーカーである米航空宇宙大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)との交渉、さらに2013年度の国防予算案次第だと答えた。

■計画打ち切りを主張する声も

 F35については、当初はシミュレーション技術の向上で、設計を大幅変更する必要を防ぐことができ、これまでの戦闘機開発に比べて短期間で生産開始できると想定されていた。しかし報告書の執筆者は、そうした想定はあまりにも楽観的すぎたと指摘している。

 国防総省の支出とF35計画に批判的な、米・防衛情報センター(Center for Defense InformationCDI)のウィンスロー・ウィーラー(Winslow Wheeler)氏はこの報告書の指摘を受け、F35計画そのものを打ち切るべきだと述べている。

 またジョン・マケイン(John McCain)上院議員(共和党)は前週、計画の予算オーバーと技術的欠陥にうんざりした様子で「ひとことで言えば、JSF計画はスキャンダルであり悲劇だ」と述べて、今後の戦闘機生産ではロッキードに厳しい条件をつけるよう政府に求めた。(c)AFP/Dan De Luce