【12月2日 AFP】ある人はミャンマーと呼び、別の人はビルマと呼ぶ――国名をめぐる論争が続くその国を米政府閣僚としておよそ半世紀ぶりに公式訪問したヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は、どちらの国名も口にしないという高度な技をひねり出して公式行事を切り抜けた。

 クリントン長官が選んだ表現は、「この国(this country)」だ。

 ミャンマーの軍事政権は約20年前に、英語の国名を「ビルマ」から「ミャンマー」に変更した。「ビルマ」は英国の植民地時代の負の遺産であり、多数派とはいえ国民の一部でしかないビルマ民族が全土を支配している印象を与える、というのが変更の理由だ。

 だが野党や亡命者らは国名の変更を、軍政が全く新しい国家を作ろうとしていることの象徴ととらえて強く反対した。米国も公式には一貫して「ビルマ」を使い続けている。

 こうした状況の中、首都ネピドー(Naypyidaw)で記者会見したクリントン長官は、「ミャンマー」という単語は一切使わず、「ビルマ」という単語を使う場合でも控えめにとどめ、ほとんどを「この国」で通した。

「この国が直面している最も重大な問題は、米国や他の国々との関係ではありません。国民が神から与えられた潜在力を発揮して生活することを政権が認め、太平洋の時代にあって、その中心に国民が居場所を得られるかどうかということが重要なのです。さもなければ、この国は再び置き去りにされるでしょう」(クリントン長官)

 クリントン長官周辺は、ビルマと呼べば訪問先の不興を買い、ミャンマーと呼べば米議会や亡命ミャンマー人らの反感を買うため、長官が難しい選択を迫られたと述べた。

 ただ、米代表団は国旗については良い解決策を思いつかなかったようだ。公式車両に飾られた国旗や代表団のバッジは、物議をかもしている新憲法に規定された黄、緑、赤の三色旗で、昔ながらの青と赤の国旗ではなかった。(c)AFP