【11月11日 AFP】経済が発展しつつある太平洋地域の新しい形を作るルール作りを目指している米国は、同国ハワイ(Hawaii)・ホノルル(Honolulu)で10日行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合で、ユーロ圏危機を相殺するためにいっそうの経済成長を図るようアジア各国に呼び掛けた。

 APEC財務相会合の議長を務めた米国のティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)財務長官は、欧州で危機が起きた中で開かれた今回の会合は、均衡ある持続的な経済成長をいかに実現するかという問題に終始したと述べた。

 ガイトナー長官は「APEC域内の経済は世界経済の減速の影響を最も強く受ける一方で、世界経済の回復に貢献し、強固で継続的で均衡ある将来の成長の基盤を築く上で、最も大きな役割を果たすこともできる」と語った。

 米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は13日、APEC首脳会議が行われるホノルルで環太平洋連携協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)の概要を発表すると見られている。現在TPPは米国と他8か国(オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)が交渉を進めている。

 その一方でアジアで存在感を強める中国との関係緊張の兆しも見えている。米国のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官は、「繁栄する中国」を米国は歓迎していると述べ、アジアの新生経済大国を封じ込めることは、米中いずれにとっても利益にもならないと語ると同時に、中国の人権問題と米中の経済摩擦に懸念も示した。

■さまざまな主張、野心的な目標に疑問も

 TPPが米国の輸出増加と、差し迫って必要とされている国内の雇用創出につながるとの期待をかけるオバマ大統領は11日夜に現地入りする。来年の米大統領選で再選を目指すオバマ大統領にとって、雇用創出は最優先の課題だ。

 アジア太平洋地域の経済団体はこぞって、TPPは「経済の成長触媒」になるとして強い支持を表明し、2012年前半には交渉が合意に達するようにと迫っている。米国ではアジア・太平洋系アメリカ人商工会議所(Asia-Pacific Chamber of Commerce)など、多くの全米規模の連合会や経済団体が、交渉参加国の指導者たちに「交渉成立に関して、野心的なスケジュールの設定」を求めている。

 米国内にも、TPPの交渉参加国に共産主義国のベトナムが入っている点や、協定案の詳細が不明確な点を批判する声はある。また日本と米国では競争激化を懸念する農業生産者の間で強い反対が起こっている。

 中国はTPP交渉に参加していないが、APEC域内での環境分野製品の関税の低減など、米国が掲げる今回のサミットのゴールに今週初め、疑問を呈した。中国の呉海龍(Wu Hailong)外交部国際司長は7日、「米国側が提示している現在のゴールは、あまりに目標が高すぎ、途上国の手に届かないように見える」と述べた。(c)AFP/Andrew Gully