【11月10日 AFP】イタリアの大富豪でメディア王にして、自称ラテン美女好きのシルビオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)首相(75)が8日、近く辞任する意向を表明したが、彼のいかなる政策よりも世界の記憶に残るのは、粗野なジョークを好むキャラクターと、悪趣味なセックス・スキャンダルの数々だろう。

 パーティー好きのベルルスコーニ首相は、第2次世界大戦後のイタリアで最長の首相在任期間を誇っているが、ベルルスコーニ時代を独占したのは彼を取り巻く一連のセックス・スキャンダルと違法行為疑惑であるかのようだ。彼を批判する人びとは、首相が他国で「笑い者」となっている状況を嘆いている。

■オバマ米大統領は「日焼けしている人」

 ベルルスコーニ首相のジョークのきわどさは今や有名だ。ドイツの欧州議会(European Parliament)議員をナチスのメンバーにたとえたり、共産主義者は子どもを茹でて肥料にすると発言したり、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領を「日焼けしている人」と表現したエピソードは、ベルルスコーニ風ジョークの一端でしかない。

 女性の国家元首にはあからさまにちょっかいを出そうとすることでも知られるが、外交の才能を見せることはほとんどなく、2009年の北大西洋条約機構(NATO)サミットの際には、出迎えた開催国ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相を待たせたまま、目の前で携帯電話で話し続け、記念撮影を逃した。

 今年初めには、自国について「クソ・イタリアなんか今すぐ出て行きたい」と話した通話記録が伊メディアにリークされた。自らが率いる自由国民党(PdL)の支持者たちに向かって、人気を高めるために「プッシー党」と改名すべきだと軽口を叩き、各方面から非難を浴びたこともある。

 クルーズ船の歌手だったこともあるベルルスコーニ首相は、派手なプレーボーイを気取り、若い頃には機転の利いた話術で人を引きつけ、大人数のグループをひとりで何時間でも楽しませることができたと自慢していた。しかし、そんなベルルスコーニ首相も、英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)を魅了することはできなかったようだ。2009年にロンドンで行われた主要20か国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)の記念撮影の際には、ベルルスコーニ首相の大声がうるさいと女王が苦言を呈したと報じられた。

 ベルルスコーニ首相は、いくつものバラードの作詞もしている。その多くはナポリ(Naple)出身の歌手で長年の音楽仲間、マリアーノ・アピチェッラ(Mariano Apicella)氏との共作で収録され、CDアルバムとして発表されている。内輪のパーティーでは今でも我慢できずにバラードを歌い出すという首相だが、今夏予定されていた「愛の歌」を集めた最新アルバムの発売は、権力の座にしがみつこうと必死の戦いを繰り広げている間にお預けとなった。

■売春婦への支払いは「困っている友人を助ける贈り物」

 首相は自らの性格を「気前がよい」と評し、若いエスコート・ガールに支払った金銭や、高級売春婦への支払いと疑われている送金などは「困っている友人を助ける単なる贈り物だ」と言ってはばからない。家庭生活は模範家族のようだと公言してきたが、1985年には女優のベロニカ・ラリオ(Veronica Lario)さんのために、最初の妻カルラ・デッローリオ(Carla Elvira Lucia Dall'Oglio)さんと離婚している。

 最近では自分の別荘で開く豪勢なパーティーに、金銭を払って若いエスコート・ガールたちを集めていたことが大々的に発覚し、ベルルスコーニ首相のイメージは地に墜ちた。2009年には売春婦のパトリツィア・ダダリオ(Patrizia D'Addario)さんと首相の「熱い夜」の会話を収めた録音テープが暴露され、ニュースのトップを飾った。しかし、多くのイタリア人男性が非難するどころか、高齢の首相のスタミナに称賛を寄せ、首相はこの難局を乗り切った。

■ベロニカ夫人、ついに三行半

 情事や浮気でベルルスコーニ首相はすっかり悪評を極めていたが、首相のことを「パパ」と呼ぶ18歳のブロンドモデルの誕生パーティーに出席したことが明るみとなると、ベロニカ夫人はついに離婚を申し立てた。ベロニカ夫人は元夫について「若い処女たちが身を差し出すドラゴン」と表現し、「病気だ」と断じ、「小娘を追い回すような男」とは一緒にいられないと宣言した。

 しかし、ベルルスコーニ首相はこの痛手からも即座に回復したかと思うと、すぐさま「美少女好きのほうが同性愛者よりまし」と発言し、またもや非難を浴びた。2008年3月の選挙遊説中には、女子大学生に夢を実現したいのならば「ベルルスコーニの息子」のような金持ちと結婚すればいいとアドバイスした。2010年には「わたしと結婚しようと、女性たちが列を作っている。わたしが善人で、裕福で、女性の扱い方を分かっているからだ」と述べた。

 また、自分がオーナーのテレビ局でショーガールとして働いていた美人歯科衛生士をロンバルディア(Lombardy)州議員として擁立したこともある。現在、このニコル・ミネッティ(Nicole Minetti)被告は、ベルルスコーニ首相への買春あっせんの罪に問われている。

■「週6回は大丈夫」、主治医も認めるスタミナ

 さらに、17歳だったモロッコ出身のポールダンサーで「ハート泥棒のルビー(Ruby the Heart Stealer)」ことカリマ・エル・マフルーグ(Karima El Mahroug)さんを買春したとして、少女買春と職権乱用の罪でベルルスコーニ首相は起訴された。この裁判の過程でさらに様々な疑惑が浮かび上がった。首相が開いていた「ブンガブンガ(Bunga Bunga)」と呼ばれるパーティーは、服を脱いだ女性たちが首相を触って挑発しながらストリップダンスを踊るエロチックなパーティーだったと報じられているが、首相はあくまで「上品なディナーパーティー」しかしていないと言い張っている。

 植毛や顔のしわ取り整形で実年齢よりも若く見え、公の前でメークをする習慣さえあるベルルスコーニ首相だが、心臓ペースメーカーを入れ、周囲からは「スローダウン」するよう注意されている。しかし、主治医のウンベルト・スカパニーニ(Umberto Scapagnini)医師は今年のインタビューで、ベルルスコーニ首相の健康状態について「身体的にも知的にも」勝り、「週に6回はセックスができる。7日目は休んだほうがよいがね」と太鼓判を押した。(c)AFP/Ella Ide

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