【10月19日 AFP】2012年11月の米大統領選に向けた共和党の候補者討論会が18日、ネバダ(Nevada)州ラスベガス(Las Vegas)で行われ、最有力候補のミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ(Massachusetts)州知事、支持率上昇中の元ピザチェーン経営者ハーマン・ケイン(Herman Cain)氏、リック・ぺリー(Rick Perry)テキサス(Texas)州知事らの間で、これまでの選挙戦で最も激しいといえる議論が交わされた。

■ロムニー氏 vs ペリー氏の激しい応酬

 10月に入って支持率を急上昇させ、精彩を欠いた共和党の候補者争いを再び活気づけたのがピザチェーン、ゴッドファーザーズ・ピザ(Godfather's Pizza)の元経営者である実業家のケイン氏だ。

「ウェスタン・レパブリカン・プレジデンシャル・ディベート(Western Republican Presidential Debate、西部共和党大統領選討論会)」と銘打たれた今回の討論会は、ケイン氏が主張する、現行の連邦税制を廃して、9%の消費税と一律9%の法人税、個人所得税を導入する、いわゆる「9-9-9(ナイン・ナイン・ナイン)税制案」を他の候補6人のほぼ全員が一斉攻撃して始まった。

 しかし今回、最も激昂気味の展開となったのは、ロムニー氏とペリー氏の応酬だった。ペリー氏の支持率は8月に大統領選に参戦した直後に急上昇してトップにつけたが、候補者討論会でのパフォーマンスが振るわず、最近は低迷している。

 挽回を試みるペリー氏は、ロムニー氏が自邸の庭師として不法滞在者を雇っているのではないかと攻撃したが、これに応じてロムニー氏が話そうとすると、隣り合わせに並んだペリー氏が繰り返し言葉をかぶせて遮った。

 怒ったロムニー氏はペリー氏に「君は人に最後までしゃべらせようとしない。アメリカ合衆国の大統領になりたいのであれば、両方の側の人びとに話させる必要があるということを、ひとつ助言しておこう」とやり返した。

 討論会終了後の夜、ロムニー氏の陣営は、ペリー氏は必死に挽回を図ったが不発に終わったと談話を発表した。ロムニー氏の広報担当者は「リック・ペリーは、ミット(ロムニー氏)の息の根を止めようという戦略を持って今回の討論会に臨んできたが、ペリーがネガティブで卑劣な個人攻撃を仕掛けるたびに聴衆からブーイングが起き、自分の息の根を止めてしまった」と述べた。

■カンフル剤として登場のケイン氏も前途は不明

 米CNNテレビとORCインターナショナル(ORC International)による討論会前日の世論調査の支持率では、26%でトップを走るロムニー氏をケイン氏が25%と僅差で追い上げ、3位のペリー氏は13%と引き離されている。ロムニー氏とケイン氏の差は誤差の範囲だ。

 しかし専門家らは、ペリー氏は十分、共和党の候補者争いに残れる程度には健闘していると言う。いずれにせよ、ロムニー氏同様、ペリー氏の資金力はケイン氏をかなり上回るため、選挙戦は依然、三つどもえの様相だ。

 ただし観測筋にはケイン氏の支持率もペリー氏と同じく急落する可能性もあると見る向きもある。ケイン氏本人も現在の支持率を維持することは、難しい課題だと認めている。

 ケイン氏は週末には、米メキシコ国境における移民の不法流入問題に触れ、国境沿いに「殺すぞ」と書いた電気柵を設置すればよいと発言し、批判を浴びた。後に冗談だったと弁明したが、ラテン系住民の多い米南西部と接するネバダ州での討論会を前にして、好ましくない動きだった。

 ピザチェーン経営者だったケイン氏がジョン・レノン(John Lennon)作曲の『イマジン』を替え歌にして「イマジン・オール・ザ・ピザ」(想像してごらん、すべてがピザだったらと)と歌っている昔のビデオ映像が出回って話題になってはいるが、政治的にはほとんどプラスにはならないだろう。

 西部で共和党候補たちがしのぎを削っているころ、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の再選を目指す民主党は首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)で共和党候補者たちの不一致ぶりに満足していたようだ。

 同夜、共和党討論会を視聴するオバマ陣営のウェブサイトには、ツイッター(Twitter)から次のようなコメントが投稿された。「今夜のキーワードのトップ3は『オバマケア』、『フェンス』(柵)、『リピール』(撤回)となっているけど、本当の勝者は『#Obama2012』(ツイッター上のオバマ陣営の2012年大統領選用ハッシュタグ)だ」(c)AFP/Michael Thurston