【10月5日 AFP】国連安全保障理事会(UN Security Council)は4日、シリア政府が反政府デモの弾圧をやめなければ対抗措置をとると警告する内容を含む決議案の採決を行った。安保理の15か国のうち9か国が賛成したが、ロシアと中国が拒否権を行使したため決議案は否決された。

 シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の政権を孤立させようという米欧の努力に水が差された形になった。

 欧米各国と米国が提案した決議案は、アサド政権が反政府デモの弾圧を続けるならば、「標的を定めた手段」を呼びかけるという内容だった。国連はアサド政権の弾圧でこれまでに少なくとも2700人が死亡したとしている。

 南アフリカ、インド、ブラジル、レバノンは棄権した。北大西洋条約機構(NATO)がリビアに空爆を行って以来、安保理の中に立場の違いが存在することがあらためて浮き彫りになった。

■安保理内の立場の違いが浮き彫りに

 決議案に反対した国の多くは、リビアで行われたような空爆がシリアでも繰り返されることに懸念を示した。

 ロシアのビタリー・チュルキン(Vitaly Churkin)国連大使は、決議案は「対立の哲学に基づいたもの」で、対抗措置の警告は「受け入れられない」と述べた。中国は、決議案はシリアにむやみに圧力をかけるだけで、事態の好転にはつながらないとの考え方を示した。

 一方、米国のスーザン・ライス(Susan Rice)国連大使は、そのようなコメントは「シリアの人々とともに立つというよりも、むしろシリアの体制側に武器を売りたいと願う人たちの安っぽい策略」だと批判し、安保理は「対象を明確にした厳しい制裁」と対シリア武器禁輸を課すべきだと呼びかけた。

 ロシアは、シリア国内で起きている暴力についてシリア政府と反政府派の双方を非難し、危機打開のための対話を始めるよう求める別の決議案を提案しているが、欧州各国はこの決議案の採択させない構えだ。

 フランスのジェラール・アロー(Gerard Araud)国連大使は安保理の会議室の外で、常任理事国2か国が拒否権を行使したことについて、「『アラブの春』に反対する行為だ」と述べた。

 シリアでは今年の3月から前例のない反政府行動が起き、政権側が武力弾圧を続けている。欧米各国の政府と人権団体は、安保理がこの問題について決議を採択できていないことを批判している。

 カナダはアサド大統領に近い人物の渡航禁止と資産凍結など、独自の対シリア制裁を発表している。シリアの隣国、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相も、近く対シリア制裁を発表すると述べている。(c)AFP