【9月24日 AFP】パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長は23日(日本時間24日未明)、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長と会談し、国連加盟申請書を提出した。

 その後、アッバス議長は、いくつかの代表団から大きな拍手とスタンディング・オベーションで迎えられて国連総会での一般討論演説のため登壇した。

 アッバス議長は国連加盟申請書のコピーを掲げ、首都をエルサレム(Jerusalem)として、1967年6月4日当時の境界線に基づいて国連加盟申請書を提出したと述べるとともに、イスラエルが入植活動を停止すればパレスチナは和平交渉に復帰すると述べた。

 反対があるにもかかわらず国連加盟申請を行った理由としてアッバス議長は、過去の全ての和平交渉は「繰り返しイスラエル政府の立場という岩盤にぶつかってきたからだ」と説明した。

 アッバス議長は、パレスチナは「イスラエルの孤立やその正当性の否定」は望んでおらず、2国間交渉での問題解決のチャンスを失わせるであろうイスラエルの入植政策を終わらせることだけを望んでいると述べた。

 ヨルダン川西岸ラマラ(Ramallah)では、大勢のパレスチナの人たちがアッバス議長の国連演説が生中継されたパブリックビューイングに集まって歓声を上げた。不測の事態に備えてイスラエルは、イスラエルとヨルダン川西岸を隔てる「グリーン・ライン」に約2万2000人の警察官を配備した。

■イスラエルは反発

 一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、「和平は国連決議によってではなく、交渉によって達成できるというのが真実だ。これまでパレスチナは交渉を拒否してきたというのが真実だ」と述べ、パレスチナ側を厳しく批判した。

 中東カルテット(Middle East Quartet、ロシア、米国、EU、国連の4者)は、1か月以内に直接交渉を再開し、2012年末までに合意に達するようパレスチナとイスラエルの双方に呼びかけた。

 ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は「永続的な和平は当事者間の交渉によってのみ実現できる」と述べ、この機会を捉えて直接交渉に復帰するよう双方に呼びかけた。国連安保理(Security Council)は26日に中東カルテットの提案を検討することになっている。

 今回の国連加盟申請についてパレスチナ側からは、「パレスチナ人が強いられた長い戦いと犠牲を思うと、この瞬間を迎えられたことは私個人として、そしてパレスチナ人全体にとって誇らしい」(パレスチナのリヤド・マンスール(Riyad Mansour)国連大使)、「これでゲームのルールが変わった」(アッバス議長の外交顧問、マジ・ハルディ(Majdi al-Khaldi)氏)などという声が上がっている。

■「非加盟のオブザーバー国家」を目指す可能性

 一方、極右として知られるイスラエルのアビグドル・リーベルマン(Avigdor Lieberman)外相は「パレスチナがイスラエルと交渉する意図がないことの現れだ」と評し、アッバス議長の演説中に固い表情を見せていた米国のスーザン・ライス(Susan Rice)国連大使は、ツイッターに「ショートカット(近道)」でイスラエルとパレスチナの和平は達成できない、と書き込んだ。

 イスラエルの当局者は、パレスチナの国連加盟が認められれば、パレスチナ自治区への資金提供の停止を含む厳しい報復措置をとると警告している。政府内部の右派勢力にはヨルダン川西岸を併合すべしとの主張さえある。

 パレスチナの国連加盟が認められるには15か国で構成される国連安保理で9か国の支持を得る必要があるが、米国は既にこの件について国連安保理で拒否権を行使する姿勢を表明している。

 安保理で国連加盟が認められなかった場合、パレスチナは国連総会で「非加盟のオブザーバー国家」として承認されることを目指す可能性がある。(c)AFP/Nasser Abu Bakr and Selim Saheb Ettaba