【8月8日 AFP】チベット亡命政府の新首相に選出されたロブサン・センゲ(Lobsang Sangay)氏(43)の首相就任式が8日、インド北部ダラムサラ(Dharamshala)の主寺院であるツクラカン(Tsuglagkhang)で行われた。センゲ氏は亡命チベット人の政治的指導者としての役割を、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(76)から引き継ぐことになる。

 就任式はツクラカンでダライ・ラマにより執り行われた。甘くした米に茶というチベットの伝統料理の贈り物を受けとった後、センゲ氏は午前9時9分(日本時間午後零時39分)ちょうどに首相就任を宣言した。チベット文化で「9」は長寿を連想させる数字だ。

 チベットの政治はこれまで宗教指導者が独占してきており、米ハーバード大学(Harvard University)で国際法を研究しているセンゲ氏の就任は歴史的な転換となる。センゲ氏は4月の首相選挙で、インドの亡命チベット人4万9000人の有権者から55%の支持を獲得し、対立候補2人に圧勝して首相に選出された。今後は、5月に政治指導者の地位から退いたダライ・ラマの職務を引き継ぐことになる。

 ダライ・ラマが精神的な指導者としての重要な役割を今後も続け、重要な政策についての判断も行うとはいえ、センゲ氏が担う首相としての役割は歴代首相よりもはるかに大きい。多くの難題がセンゲ氏を待ち受けている。

 ダライ・ラマは長らくチベットの象徴だったが、センゲ氏は亡命チベット人社会の外ではほとんど知られていない。インド北東部の紅茶の産地ダージリン(Darjeeling)で生まれ育ったセンゲ氏は、デリー大学(Delhi University)に進学。その後ハーバード大学法科大学院(Harvard Law School)で修士号を取得し、米国の居住権を得て同大の研究者となった。

 センゲ氏は、中国統治下のチベットの「意義ある自治」を求めるダライ・ラマの政策への支持を公言してきた。だが、センゲ氏はまだ若く、かつて独立派のチベット青年会議(Tibetan Youth CongressTYC)のメンバーだったことから、センゲ氏がダライ・ラマよりも急進的な政策を掲げる可能性があるとの臆測も広がっている。(c)AFP/Tenzin Tsering