【6月28日 AFP】アフガニスタン中央銀行(Da Afghanistan Bank)のアブドゥル・カディル・フィトラット(Abdul Qadir Fitrat)総裁は27日、滞在先の米国で声明を出し、同国最大の民間銀行が絡む汚職事件の捜査が進む中で自らの身の危険を感じたため中銀総裁を辞任し、米国へ逃亡したと発表した。

 フィトラット氏は米国の永住権を持っていると報じられている。アフガニスタンでは同国最大の民間銀行、カブール銀行(Kabul Bank)周辺の汚職疑惑についての捜査が、政府周辺の要人にまで及びつつある。

 フィトラット氏は4月に議会で証言し、カブール銀行をめぐる巨大不正疑惑に関わった可能性があるとして複数の政府要人の名前を挙げていた。英BBCによると、フィトラット氏は「議会証言後にいっそう命の危険を感じるようになった」と語ったという。

 国際的に著名なポーカー・プレーヤーだったシェルカン・ファムード(Sherkhan Farnood)氏が2004年に設立したカブール銀行は、同国で多数の公務員の給与を取り扱っている。カブール銀行の共同オーナーには、ハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領の兄であるマフムード・カルザイ(Mahmood Karzai)氏、モハマド・ファヒム(Mohammad Fahim)第1副大統領の兄弟も名を連ねる。昨年には破綻寸前に陥り、多くの投資家が同行に詰め掛けた。

 アフガニスタンのワシード・オメル(Waheed Omer)大統領報道官は、フィトラット氏の生命が危険にさらされているというのは事実ではないとの見方を示すとともに、フィトラット氏は正式な手続きを経ていないのでこれは「辞任」とはいえず、カブール銀行をめぐる「法的な問題」から逃げたのだと述べた。しかし「法的な問題」の詳細については説明しなかった。(c)AFP