【5月31日 AFP】イラン政府が、インドに向かっていたドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相を乗せた航空機の空域通過を一時的に拒否した。イランが拒否した理由は明らかになっていない。

 インドのプラティバ・パティル(Pratibha Patil)大統領、マンモハン・シン(Manmohan Singh)首相らとの会談のためインドに向かっていたメルケル首相は、イラン空域の通過を2時間にわたって拒否され、30日夜から31日未明にかけてトルコ上空で旋回飛行を余儀なくされた。

 ドイツのギド・ウェスターウェレ(Guido Westerwelle)外相は31日、ベルリン(Berlin)駐在のイラン大使を呼んで抗議した。ドイツの閣僚4人などからなる代表団を乗せた第2便は遅れて飛び立ったが、イラン当局からの通過拒否はなかったという。

 インドのニューデリー(New Delhi)で同国のシン首相と共同記者会見に臨んだメルケル首相は、「無事に到着できて安心した」と語ったが、イラン領空通過の件についてはあまり話したくない様子で、「インド・ドイツ首脳会談も行うことができ、すべて順調にことは運んだ。それが重要な点だ」とだけ述べた。

■関係深めるインドとドイツ

 シン首相とメルケル首相は会談で、アフガニスタン情勢や地域の安全保障などについて話し合ったという。ドイツは、米国とアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)の秘密直接交渉を仲介すべく動いているとの報道もある。

 また、メルケル首相は、120億ドル(約9800億円)規模のインドの戦闘機調達計画をめぐり、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の4か国が共同開発した戦闘機、ユーロファイター・タイフーン(Eurofighter Typhoon)をインドに売り込んだ。

 ドイツは、インドにとって欧州最大の貿易相手国。2国間の2010年の貿易総額は154億ユーロ(約1兆8000億円)だった。インド当局者によると、2012年には200億ユーロ(約2兆4000億円)にまで成長する見通しだという。

■原発政策では正反対

 ドイツは前日、2022年までの全原発停止を発表したばかり。これは東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所の事故発生以降では、主要国として初めての対応だ。

 一方インドは、原子力発電能力を大幅に増強する計画で、ロシアやフランス、日本や米国などと国内の原発建設について交渉している。現在は原子力が全発電量の3%程度だが、2020年までに6%、2030年までに13%に増やす方針を政府が示している。(c)AFP/Adam Plowright