【5月20日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は19日、中東政策について演説し、将来のパレスチナ国家とイスラエルとの国境は「1967年の境界線を基本とすべきだ」と述べた。イスラエルは直ちに強く反発した。

 オバマ大統領は、「イスラエルとパレスチナの国境は、安全で明確な国境を画定するため、(第3次中東戦争前の)1967年の境界線と土地交換の合意に基づくべきだ」「パレスチナの人々にも、1つの統治国家を持ち、自らを統治する権利や可能性を最大限に行使する権利がある」などと述べ、双方に対話を呼びかけた。一方で、国連(UN)総会で国家承認を得ようとのパレスチナの思惑については、失敗に終わるだろうとの見方を示した。

 これに対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は直ちに声明を発表し、(占領地を放棄して)1967年の境界線まで撤退することはできないと強く反発した。

 ネタニヤフ首相は声明で、2004年にジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領(当時)が、1967年の境界線への「完全なる撤退」は「非現実的」だとする見解を示していると指摘。「2004年に米国がイスラエルに示し、米両議会が圧倒的多数で支持した公約の再確認をオバマ大統領に期待する」と述べた。ネタニヤフ首相は20日、訪米する。

 一方、パレスチナ自治政府側は慎重な姿勢を見せている。ヨルダン川西岸(West Bank)で記者会見したパレスチナ側の和平交渉責任者、サエブ・アリカット(Saeb Erekat)氏は、オバマ氏の演説内容を協議するため、マフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長が中東諸国に緊急会合の開催を呼びかけたことを明らかにした。

■中東革命、「人間の尊厳の叫び」と評価

 オバマ大統領は、「アラブの春」と呼ばれる中東・北アフリカの民主化運動について、「人間の尊厳の叫び」だと評価し、米独立戦争や南北戦争を引き合いに出して、弾圧は避け得なかったとの見方を示した。

 その一方で、米政府として中東政策の方向性を大きく転換することはなく、同盟国であるサウジアラビアの強権的な政治についても言及しなかった。

 シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に対しては、民主化への移行か「退陣」かの選択を迫った。また、バーレーン政権と反体制派の本格的な対話を求めたほか、イエメンのアリ・アブドラ・サレハ(Ali Abdullah Saleh)大統領には、政権移譲の約束を守るよう要求。リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐に関しては、「退陣せざるを得ない」と述べた。(c)AFP/Steve Weizman /Stephen Collinson