【5月10日 AFP】ロシアに配備された戦車やミサイル。この中には本物そっくりの、風船のように空気で膨らませたニセモノが含まれているかもしれない。

 モスクワ(Moscow)郊外のホチコボ(Khotkovo)にある工場では、空気でふくらませるデコイ(本物の兵器だと敵をだますための装備)メーカー「ルスバル(Rusbal)」の従業員たちが、シートを縫い合わせてニセの戦車や武器を生産している。

 1993年創業の同社は空気で膨らませるおもちゃも製作しているが、空気で膨らませるT80戦車やS300対空ミサイル、戦闘機などを得意とし、ロシア軍に納入している。価格は非公開だが、ロシア軍がこうした装置の配備を増やしていることもあり、工場は大忙しだ。

 工場長は、「これらの装置は敵を効果的に欺くことができ、結果的に本物の兵器を守ることができます」と話した。軍はこうした偽装技術を第2次世界大戦以来活用しているという。

 技術部門の責任者も、「ビルの10階から見下ろしたとき、本物の戦車と当社の戦車は全くといっていいほど見分けがつきません」と自慢げに話した。偽装戦車は本物の戦車同様に熱を発散し、電波を反射するように作られているという。

 偽装戦車には、配備しやすいという利点もある。空気を数分間注入するだけで済むからだ。

 同社によると中国やカナダなどもこうした装備を導入しているが、欧州製の偽装戦車は重量が300キロもあるのに対しロシア製はわずか90キロしかないなど、ロシアの技術の方がはるかに革新的で進んでいるという。(c)AFP/Elise Menand